コロナワクチン

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[エッセイ 587]

コロナワクチン

 

 政府の非常事態宣言がやっと解除された。しかし、ちょうど卒業、入学、送別、歓迎といった異動と宴の時期と重なった。寒い長い冬から解放され、花と酒を求めて、人がもっとも浮かれるシーズンでもある。この解除は、不幸にもコロナ禍の第四波を約束されたようなタイミングとなってしまった。

 

 コロナ禍が始まったころ、波は幾重にもやってくると聞かされた。それでも、まだ半信半疑だった。人はそれほど愚かではないし、医学だって日々進化していると信じて疑わなかったからだ。しかし、波はその度に数倍に成長した。今のままでは、第四波はさらに大きくなって襲ってくるのではなかろうか。

 

 人は、失敗のたびに反省を重ね、さらに挑戦を続けて犠牲者の山を築いていく。それでも、その屍を乗り越えて難題と取り組み、ついには完全勝利の栄冠をつかみ取ろうとする。コロナとの戦いでは、すべての人がそれに罹り、すべての人が抗体を備えるまで戦い続けなければならない宿命にある。そんな無謀な戦いは早々に切り上げ、ワクチンできっちりとケリを付けるべきである。

 

 そのワクチンで、いま世界をリードしているのは、米ファイザー製でありそれに続くのが英アストラゼネカと米モデルナである。その一方、中国製、ロシア製それにインド製が加わり、外交手段にまでなりつつあるようだ。最近では、ベトナムでも4つのグループが開発に取り組んでいるという。

 

 一方、国産ワクチンはどうなっているだろう。アンジェス(株)が治験段階にまで漕ぎ着け、年内にも実用化されるだろうと聞いていた。塩野義製薬(株)も、年内にはそれに近い段階までもっていけるだろうと報じられていた。しかし厚生労働省所管の独立行政法人から待ったがかかった。被治験者が少なすぎるというのだ。このままでは早くて2022年からになりそうだという。

 

 これら2社のほか、第一三共など3社が名乗りを上げているが、実用化はまだずっと先になりそうだ。日本は科学技術立国といわれ、とくに基礎研究分野においてはノーベル賞受賞者もたくさん輩出してきた。かつては、野口英世北里柴三郎といった感染症の偉大な学者も育ててきた。高度成長期には、「ワクチン先進国」とまでいわれたあの日本は、一体どこへ行ってしまったのだろう。

 

 幸か不幸か、このワクチンは一度打てば生涯安心というものではないようだ。インフルエンザワクチン同様、一定期間ごとに接種する必要がありそうだ。場合によっては、毎年受けなければならないかもしれない。第一段階は世界から完全に取り残されたが、第二段階以降はいまからでも十分に間に合う。

 

 いま、ワクチン外交という言葉まで飛び交っている。製薬会社も行政も最高レベルの危機管理とわきまえ、国産ワクチンの完成にスパートをかけてほしい。

                      (2021年3月21日 藤原吉弘)