コロナ禍・第5波

 

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[エッセイ 598]

コロナ禍・第5波

 

 コロナ禍の第5波が大波となって襲ってきた。1日あたりの感染者数はとうとう1万人を越えた。国民はひたすら巣ごもりに励む一方、飲食業を中心とした事業者は困窮の極みに達している。医療機関は昨年春以来逼迫を続け、医療従事者は緊張状態と多忙を極めている。それにもかかわらず、第5波は容赦なく国民の努力を踏みにじり、多くのひ弱な人を飲み込もうとしている。

 

 そのため、政府は、またも緊急事態宣言を出すにいたった。期間は8月2日から8月31日まで、対象は東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、沖縄の6都府県である。ほかに、北海道、石川、京都、兵庫、福岡の5道府県が蔓延防止措置の対象になっている。昨年春以来の最大のピンチを迎えたわけである。

 

 その一方、繁華街への人出は期待していたほど減らず、一部の飲食店では飲酒の客で深夜まで賑わっているという。そして、東京オリンピックは中盤にさしかかり、日本の活躍もあってそれなりの盛り上がりをみせている。日本の金メダル獲得数は、早くも前回の東京大会を上回り、史上最高を記録するにいたった。こうした状況を反映してだろうか、感染者数は爆発的な拡大を続けている。

 

 ここで、現況をデータで見てみよう。感染者数累計は7月末時点で92万6千人、日本の総人口は1億2千536万人なので、感染者率は0.739%ということになる。感染経路は正確な統計はないが、東京都の会議で提示された直近1週間の値では、家庭内が大半の55.8%となっている。単純計算では、外からもらってきた人が全人口の0.327%、それをうつされた家族が0.412%となる。

 

 こうした混沌とした状況にあって、野党や評論家はもとより多くの国民も、政府や自治体の無策に批判を強めている。それに加えて、ワクチンが決め手といいながら、他の主要国に比べて大きく出遅れている。7月29日時点で、2回の接種を完了したのは3,514万人、全人口の28.0%にすぎない。国産ワクチンの開発にいたっては、年内はとても間に合いそうにないということである。

 

 どうしてこうももたついているのだろう。やはり世間でいわれているとおり、政府や自治体の実行力の弱さに加え、事なかれ主義がそれに輪をかけているということだろうか。片や一部の国民も、政府のいうことには耳を貸さず、自由気ままに振る舞っているのではなかろうか。上記の「外からもらってきた人0.327%=約41万人」のうちの何割かがそれに該当するはずである。

 

 一部の人は、もっと公権力の統制を強めるべきだと声をあげている。しかし、国や自治体の統制強化は極めて危険である。下手をすると、専制主義へと道を開くことにつながる。すでに1年半の苦い経験を積み、どうすればいいかみなよく分かっている。国民一人ひとりが、襟を正し、自身を律すべきである。

                       (2021年8月1日 藤原吉弘)