雨戸の錠とオンラインショップ

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[エッセイ 582]

雨戸の錠とオンラインショップ

 

 スライド式雨戸の錠が壊れてしまった。雨戸の底辺にあたるアルミフレームに、内側から取り付けられている小さな部品のことである。雨戸を閉めて、その錠の縦軸部分を上から押し下げると、軸が下に伸びて敷居に開けられた穴に差し込まれロックされた状態になる。雨戸を開けるときは、その錠の右側にあるレバーを押すと、バネの力で縦軸が跳ね上がり、錠が外れる仕組みになっている。

 

 今回の不具合は、そのラセン状のバネが切れて縦軸が下がったまま、常にロックがかかった状態になってしまったことである。40年間も毎日上げ下げしていたのだから、劣化して切れるのも当然かもしれない。縦軸の上辺を指でつまんで上げ下げすれば、雨戸の開閉は可能であるが極めて不便である。とくに、錠の部分が戸袋の中に入ってしまうところでは、縦軸を手で持ち上げることができないので、それが突出したまま敷居を擦ることになる。

 

 ある日、ホームセンターに用事があったので、ついでにその取り替え部品も探してみた。しかし、いくら探しても見当たらない。係員に聞いてみたら、最近まで置いてあったと思いますが、いまは扱っていませんということだった。以来、その錠の開閉は手作業が定番となってしまった。戸袋にかかる部分では、縦軸が敷居を擦らないようそっと開閉するのが精一杯である。

 

 そんなとき、ガスストーブを使うのに、電気の延長コードが必要になった。物置きから道具箱を持ち出して予備のコードを探していたら、あの雨戸の錠の新しいものが出てきた。ビニール袋に大切そうに入れられた書類も添えられていた。よくみると、8年前にオンラインショップでメーカーから直接取り寄せたものだった。3個買ったうちの1つが残っていたらしい。嬉しくなって、すぐ壊れた錠と取り替えた。以来、朝夕の雨戸の開閉が楽しみにさえなった。

 

 それにしても、なぜこんなにもすっかり忘れてしまったのだろう。雨戸の錠が壊れ修理したことはもちろん、部品をネットで買えることも、実際にそうしたこともきれいさっぱり忘れ去っていた。その時の書類を見ると、部品単価1,000円、消費税は5%で1個50円、送料は3個で525円、3個総計3,675円を代引きで購入していた。これらのことをあらためてネットで確認してみた。税率は10%に変っていたが、他はすべて当時のままだった。

 

 こんな便利な方法があったことを、なんでこうもさっぱりと忘れていたのだろう。毎日ネットに触れていながら、まったく気がついていなかった。自分ではまだ若いと思っていたが、実際には記憶が途切れていることすらあるのかもしれない。物事に気が回らなくなっていることも多々あるはずだ。これからは、身体はもとより、脳トレにもいっそう励まなければならないようだ。

                      (2021年1月26日 藤原吉弘)