TPP

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[エッセイ 331]
TPP

 日本は、TPPへの参加に半歩を踏み出した。もし参加が決まり、交渉が妥結したとすれば、1869年(明治2年)の開国、1960年の貿易の自由化、そして1967年の資本の自由化に続く「平成の開国」となる。

 このTPP(Trans Pacific Strategic Economic Partnership・環太平洋経済連携協定)は、2006年にシンガポールなど4カ国で交渉をスタートさせた。後にアメリカなど5カ国が加わり、いまでは太平洋を取り巻く9カ国が詰めの作業を急いでいる。今秋になって、日本、カナダおよびメキシコの3カ国が交渉参加の意思を表明している。もし、これら12カ国すべてが連携できたとすれば、世界経済の4割を占める大経済圏が出現することになる。

 目指すのは、単にモノの交流に限らず、あらゆる分野に亘って域内の垣根を取り払っていこうというものである。その範囲は、物品はもとより、投資、知財、情報、サービス、制度、労働など21の分野に及んでいる。

 経済の自由化の段階には、貿易をより自由化しようというFTA(Free Trade Area)があり、さらにサービスや投資なども自由化しようというEPA(Economic Partnership Agreement)がある。そしてその先にはEU(European Union)などが目指す市場と通貨の完全統合がある。TPPは広域のEPAにあたる。

 自由化の段階にはもう一つ地域の枠組みの問題がある。ヨーロッパのEU、東南アジアのASEAN(Association of South-East Asia Nations)、北米のNAFTA(North America Free Trade Agreement)などすでにいくつかの事例がある。

 全世界が一つにまとまればそれに越したことはないが、国により地域によって事情が違うことから段階を踏んでいくのが現実的である。いま進行中のTPPがいいのか、ASEAN日中韓3カ国が加わるのがいいのか。経済面に限らず、安全保障なども含め総合的に考えていく必要がある。

 先ごろ、世界の人口は70億人を突破した。2050年には93億人に達すると予想されている。人口が増え、経済成長が続けば、エネルギー消費や食料需要はそれに倍して増加し、地球温暖化はいっそう加速していくはずである。なにを、どこで、どのように作るのが最適か、ここは地球全体の利益を優先し、適材適所を市場原理に従って冷静に見極めていく必要がある。

 これからの日本は、人口の減少、高齢化、産業の空洞化と、縮んでいく一方である。選択と集中による国内産業の戦略的な再編に踏み切り、アジアの成長力を積極的に取り込んでいく必要がある。その過程で、程度の差はあっても痛みを伴うことは避けて通れまい。日本には、日本人には潜在的な力があり、柔軟性と適応力がある。ここは、小異を捨て大同につくときではなかろうか。
(2011年12月19日)