B級グルメ

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[エッセイ 297]
B級グルメ

 このところ、B級グルメが身近なところでも話題に上るようになった。この20年来のB級グルメブームは、折からの地域おこし運動と呼応する形で、巨大な波となって私たちのすぐ目の前に迫っている。

 今年の第5回「B級ご当地グルメの祭典B-1グランプリ」は、46の団体が参加して、43万人もの入場者を集め、2日間にわたって厚木市で開かれた。主催は、「B級ご当地グルメでまちおこし団体連絡協議会」という社団法人、競技に参加したのは各地の町おこし団体である。専門の飲食業者は一切加わっていないという。評価順位は、入場者1人2票までの人気投票によるそうだ。

 今回の上位入賞は、グランプリ:甲府鳥もつ煮、2位:蒜山(ひるぜん)やきそば、3位:八戸せんべい汁であった。過去のグランプリは、第1回と2回が富士宮やきそば、第3回が厚木シロコロ・ホルモン、そして昨年の第4回が横手やきそばであった。グランプリをとった町には、それ目当てに遠来の客が押し寄せているという。厚木は、大会2日間の経済効果が37億円、以降1年間で46万人の来客と42億円の経済効果があると見込んでいるそうだ。

 B級グルメというのは、1980年代半ばから雑誌などで使われだしたもので、高級グルメのA級に対する中級グルメの呼び名である。主に、値段によってランク分けされたもので、「ぜいたくでなく、安価で日常的に食される庶民的な飲食物のこと」と定義づけられている。

 一方、ご当地グルメというのもよく耳にする。こちらは、元来がご当地の特産品である。地域特性と長い歴史の中で、独自に育くまれてきたものである。この中には、殿様しか口にできないような高級なものから、もっぱら庶民の食べ物として発展してきたものまで、値段はピンからキリまである。地産地消が前提となり、普遍性に欠けて当然の特徴ある料理である。

 ところが、最近のご当地グルメにはその特徴が極めて薄い。「全国ご当地グルメランキング」によると、∥膾紂Г燭馨討、∧_:博多ラーメン、2I諭Ш衢杆シュウマイ、せニ據Щニ撻蕁璽瓮鵝↓トヾ曄名物のハンバーガー、ΣI諭РI猷鳩魯蕁璽瓮鵝↓Ц鑅據Д轡蹈灰蹇Ε曠襯皀鵝↓富士宮富士宮やきそば、福岡:もつ鍋、東京:月島もんじゃ・・(「ぐるたび」編集部調べ)

このような特徴ある料理といえども、食文化が庶民のものである限り、ご当地グルメがB級グルメ化していく流れは止められそうにない。ご当地グルメはもとより、B級グルメといえども地産地消を大前提に、その特徴を生かしきる工夫が必要である。その土地でなければ、その店に行かなければ決して口にできない料理が生み出されてこそ食文化のさらなる発展が約束される。
 (2010年12月9日)