セミの脱皮

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[風を感じ、ときを想う日記](188)8/8
セミの脱皮

 「朝顔に つるべ取られて もらい水」。俳人、加賀千代女(1703~1775)が35歳のときに詠んだ句である。

 朝、顔を洗おうと井戸端へ行ったら、朝顔の蔓が井戸のつるべに巻きついていた。花も開いている。せっかくだからそっとしておいてやりたい。そこで、お隣の家に貰い水に行った。・・そんな情景をやさしく詠ったものであろう。昨夜、そんな情景にめぐりあった。

 わが家では、朝になると前夜使った風呂の床のスポンジマットを、コンクリートのたたきに立てかけて干しておくことにしている。普段は、日暮前には取り入れるが、昨日は暗くなるまで忘れていた。

 気がついて取り入れようとすると、そのマットの縁でセミが脱皮の最中であった。今年は、あまり見かけることのない貴重な脱皮風景である。今夜はマットは使わないで、そのままにしておいてやろう。

 夜遅く、そっと覗いてみると、セミは脱皮を終え抜け殻のそばで羽が乾くのを待っていた。明日は、7年の雌伏の時を越えて、いよいよ一生一度の大役を果たす時である。

 今朝、マットには抜けがらだけが残されていた。