壁掛け時計

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[風を感じ、ときを想う日記](170)6/2
壁掛け時計

 わが家で永年働きつづけてきた壁掛け時計がついに動かなくなった。新婚間もないころ、部屋の装飾にもなればと買ったものである。

 当時まだめずらしかった音叉時計である。二つ並べた磁石に電圧をかけると、その反発力で一定の振動音が発生する。その音叉をタイムベースにしたのが音叉時計である。夜静かになって耳を澄ませると、かすかにウーンという音がしている。クォーツには劣るが、かなり正確に時を刻んでいた。

 以来40年、まさにわが家の歴史を刻みつづけてきた生き証人である。修理すればあるいはまた動くようになるかもしれないが、この辺でゆっくりと休ませてやることにした。聞くところによれば、音叉時計はクォーツに押されて1976年には生産中止になったそうだ。

 後継機は、誤差のまったくない電波時計にした。現役を引退したいま、時計が少々狂ったところで実生活に障るようなものはなにひとつ見当たらないが、それでも正確なのにこしたことはない。まして、わが家の後半を見届けてもらおうとすれば、それくらい立派な時計があってもバチは当らないだろう。

 梱包を開け、電池を入れてしばらく見守っていると、長針がスーと回りだし“定刻”にピタリと寄り添った。

 6月1日は電波の日、10日は時の記念日。偶然とはいえ、いい記念になる。