キンモクセイ咲く


[風を感じ、ときを想う日記](1213)10/13

キンモクセイ咲く

 

 昨日の朝のことだった。雨戸を開けると、突然あの個性的な香りが鼻をついてきた。アッ、やっぱり咲いたのだ。実はその前日、わが家のキンモクセイが、なにか蕾らしい白っぽいツブツブ玉を枝一面にくっつけていた。もうすぐ咲くのだなと感じさせていた。まさにその翌朝、あの強烈な香りを放ち始めたのだ。

 

 朝食後、ご近所を少し歩いてみた。右からも、左の方からも、あの芳香剤のような香りが漂ってきた。そのつど、きょろきょろしながらその香りの元を探し求める動作を繰り返してしまった。結局、ご近所ではたいていの家に金木犀が植えられていることがわかった。普段はまったく目立たない地味な植木だが、この時期になるとその反動といわんばかりに自己主張を強めている。

 

 散策ついでにもう少し足を伸ばすと、私鉄の線路脇に出た。かつては、その土手は一面茅の株で覆われていた。しかし、近年はご多分に漏れずクズの占領地にされてしまっている。その隙間に小さくなった茅が肩身の狭そうな趣で穂を開き始めている。たしか、ここは茅とセイタカアワダチソウの激戦地だったはずだが、両者ともいまは見る影もない。

 

 栄枯盛衰とは使い古された熟語だが、わずか数十年の間にそれを現実のものとして目の前に展開してみせている。ここ数日のわれらがヒロイン・キンモクセイは、この過酷な生存競争にこれからも勝ち抜いていけるだろうか。