大腸の内視鏡検査、自宅での事前準備

[エッセイ 665]

大腸の内視鏡検査、自宅での事前準備

 

 年1回の定期健康診断で、大腸の内視鏡検査が必要と診断された。こんな結果になったのは11年ぶりのことである。つい5~6年前のことだと思っていたが、もうそんなに経っていたのだ。あのときはなんでもなかったが、以来ずいぶん年月が経っているので、はたして今回も無事でいられるか少々心配である。

 

 かかりつけの内科医から紹介されて、町内の胃腸専門医の門を叩いた。検査日は一週間後の午後と指定され、そのための事前準備の指導を受けた。前日の生活は、夕食を消化のいいものにするほかはそれほど大きな制約はなかった。問題は当日午前中の自宅での準備である。前回は、全てを施設でやってもらったが、今回はすべてを自宅で整え、検査直前に医院に向かうことになっていた。

 

 自宅での事前準備とは、午前中のなるべく早い時間に、腸内をすっかり空っぽにしておくことである。検査は、お尻から内視鏡を差し込み大腸の隅々まで点検する医療行為だ。少しでも不純物が残っていたら完全な検査はできない。自宅での事前準備段階で、口から食道、胃、十二指腸、小腸、大腸、そしてその出口まで、完全にクリーンな状態にしておかなければならないわけである。

 

 前夜9時ごろ、下剤と思われる錠剤を飲まされた。そのせいか、夜中に2回もトイレに駆け込んだ。夜が明けると、粉末の下剤を1800mlの水に溶かして8時から1時間かけて飲めという。それを終えると、9時からはさらに真水を900ml飲めという。その過程で、9時前から便意を催しだし、数分おきにトイレに駆け込むようになった。水などゆっくり飲んではいられない状態になった。

 

 それでも、9時台半ばには少しずつ落ち着いてきた。トイレの間隔も少しずつ延び、10時前には排出液はほぼ透明な状態になった。医院を訪れる約束の時間は午後1時、検査を始めるのは午後1時半といわれていた。やっと落ち着きを取り戻した自身の体を持ち上げるようにして、真昼の一番暑い時間帯に徒歩で医院に向かった。帰途、自身で車を運転することは厳禁されているためだ。

 

 検査は予定時間には始まった。鎮静剤を点滴されながらの診察である。ベッドに横向きに寝て膝を抱えてくださいといわれそのとおり全身を前に折り曲げた。・・・「ハィ、終わりました」。なんと、体を折り曲げた以降の記憶がすっかりなくなっていたのだ。前回は、点滴はなくそれなりに苦痛も伴っていた。今回も、ポリープと検査用サンプルを少し摘出したそうだがもちろん記憶にはない。

 

 事前準備には大わらわだったが、検査そのものはあっという間?だった。翌朝、その後の健康状態について医師から問い合わせ電話をいただいたが、快適ですとだけ返事をした。検査結果は、細胞検査の結果が出る2週間後に説明を受けることになっている。今回の検査がピンピンコロリに繋がればさいわいである。

                      (2022年8月29日 藤原吉弘)