白内障手術・いざ本番

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[エッセイ 546]
白内障手術・いざ本番
 
 白内障の手術は、左、右の順で片方ずつ2日間に分けて通院で行われた。この手術では、目薬の点滴が重要な役割を担っているが、その使い分けにはかなりの神経を使った。2日目の右目の場合では、左目でやったときと同じように4種類の目薬を手術の2時間前から5分おきにさす。その1時間前には、前日の術後の目薬を3種類さしたばかりである。肝心の目より頭の方が混乱してきそうだ。


 手術のときは、付き添いの者も見学できるというので、初日は家内に一緒に行ってもらった。手術の様子をしっかりと見ておいてほしかったのだ。同時に、家内にもいずれそのときが来るかもしれないので、その参考にもなるはずだからである。それにしても、見学ができるというのは素晴らしいことだ。医師にそれなりの自信がなければ、そんなことはしないはずだ。技術はもとより、設備や管理体制においても最先端をいっているという自負がそうさせているのだろう。


 手術室に入って約10分、闇の中に強く輝く小さな光を見つめているうちに手術は終わった。それまでは、真暗くなってなにも見えなくなるだろうくらいに漠然と考えていた。特別の痛みも苦しみもなかった。しいていえば、自分でその様子をまったく見ることができなかったというくらいである。代りに、家内がしっかりと見届けてくれていた。


 案内書によると、手術は4つのステップを踏むことになる。1、角膜と呼ばれる水晶体を包んでいる袋の前面に半円形に切れ目を入れる。2、角膜の切れ目の部分をめくって開口部を作る。3、角膜に包まれていた水晶体を小さく砕いて吸引除去する。4、水晶体の代わりに眼内レンズを入れる。場所柄、角膜の縫合などということはできないはずなので、消毒が済めばそれで終りとなる。


 白内障とは、レンズの役目をしている水晶体が、加齢とともに濁って見えにくくなる病気のことをいう。今の治療方法は、水晶体を除去して人工のレンズを挿入することである。ただ、水晶体は前後に厚くなったり薄くなったりしてピントを合わせることができるが、人工のレンズは固定されたままで自動調節はできない。多焦点レンズも用意されてはいるが、きわめて高額で健康保険の対象ともならない。どうしても、メガネなどの補助的な対応策が必要となる。


 昨日の2日目、右目の手術も無事に終わった。早くも、かなり明るい兆しが見えつつある。あとは、自身の体と人工レンズが互いにいかに親密に馴染み合ってくれるかを待つばかりである。それまでは、衛生面にしっかりと注意し、医師と自身の二人三脚でケアしながら新しい世界を切り開いていくつもりである。


 初めて医師を訪ねて1カ月少々、念には念を入れて準備してきた。しかし、心から満足いく状態に仕上げるには、これからの1カ月が本当の勝負である。
                       (2020年2月7日 藤原吉弘)