カジノ

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[エッセイ 324]
カジノ

 大王製紙の井川前会長が、カジノで100億円を超える損を出したという。個人がどこでどれだけの損をしようと、他人がとやかくいう筋合いではない。しかし、その穴埋めをするために、子会社から106億円もの金を、有無を言わせず無担保で融資させたとすれば世間は黙っていないだろう。

 私が本物のカジノに出会ったのは、いまから36年前、ソウルのウォーカーヒルだった。50米ドルの予算でルーレットに挑戦してみたが、増えたり減ったりを繰り返し、結局全部すってしまった。賭け事すべからく潮時が肝心だが、素人は引きどきの見極めができず、ずるずると底なし沼に落ちていくようだ。

 その20年後、ふじ丸のワンナイトクルージングで再びルーレットに出会った。ただ、この船は日本船籍なので、領海内はもとより世界中でお金を賭けることは許されない。カジノには、その後も香港から乗ったハロン湾周遊の大型クルージング船やマカオあるいはラスベガスでも出会った。しかし、本気で賭けるだけのお金は持ち合わせてはいなかった。

 カジノ(CASINO)の語源はイタリア語のCASAで、“小さな家”という意味だ。おもに、王侯貴族の社交用や娯楽用の別荘を指していたそうだ。それが、娯楽施設を備えた遊戯社交場へと変化していった。一部の別荘では賭博設備が備えられるようになり、賭博場の性格を強めていったという。

 カジノは、いずれの国でも禁止と脱法のイタチゴッコを繰り返してきた。そんなとき、ある権威筋がカジノの儲けに課税することを思いついた。いくつかの国はこのアイディアに飛びつき、合法的なカジノが次々と生まれることになった。いまでは、世界120カ国で合法化され、大小2000軒以上のカジノがあるそうだ。カジノの設備には、ルーレット、ポーカー、ビッグシックス、バカラ、大小、ブラックジャック、それにスロットマシンなどがある。

 日本ではカジノは禁止されているが、競馬、競輪、競艇オートレースのような公営ギャンブルと民間のパチンコは例外的に認められている。色合いは違うが、宝くじとサッカーくじも合法的な公営ギャンブルの一種である。

 賭け事では、大きく注ぎ込む人がいるから、マカオやラスベガスのようにカジノは儲かり街も繁栄する。大勝負をするのはアラブの王族だけかと思っていたら、井川氏やハマコーこと浜田幸一氏のような日本人もいる。こうした人たちのおかげで、一般観光客はお相伴にあずかれ、ショーもタダで見られる。

 人間、おしなべて賭け事が好きなようだ。賭け事にはまると、夢中になってなかなかやめられなくなる。負けが込むと、深みにはまり賭け金もさらに大きくなる。賭け事は、手持ちの現金の範囲内で、自分の責任でやるべきだ。
(2011年11月1日)