交響曲・英雄

[風を感じ、ときを想う日記](1125)7/12

交響曲・英雄

 

 日曜夜9時からは、NHKの「クラシック音楽館」でべートーべンの交響曲第3番・英雄を聞いた。今年で95歳を迎える現役最高齢のヘルベルト・ブロムシュテットの優雅な指揮にもあらためて勇気づけられた。ここ数日来鬱積していた気分が、これで一気に晴れた気持ちになれた。

 

 テレビ番組は、週末の異常事態に追われ放しであった。7月8日金曜日から土曜日にかけては、安倍元総理の暗殺事件のことで持ちきりとなった。残念で悲しい事件だけに、気持ちは暗く落ち込むばかりだった。おまけに、他にどんなことがあったのか、明るい出来事もあったはずなのにまったく伝わってこなかった。世界や世間の動きから、半分以上目隠しされた状態だった。

 

 一転、10日日曜日になると、選挙一色になった。相撲が始まったというのに、テレビ番組まで浮かぬ表情である。そして午後8時、全テレビ局が一斉に開票状況を伝え始めた。途中経過がどうなっているか、最終結果がどうなるのか、そんな報道ばかりで、他のことなどまったく考えさせてくれなかった。

 

 そんな選挙一色に塗りつぶされていただけに、日曜夜9時のチャンネル切り替えは見るものにとってきわめて大きな価値があった。交響曲「英雄」は、暗殺された元総理を称えるために用意されたものではもちろんないが、偶然とはいえ立派な供養になったのではなかろうか。元首相のご冥福をお祈りしたい。