ツツジとサツキとシャクナゲと

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[エッセイ 343]
ツツジとサツキとシャクナゲ
 
 名残の桜見物に出かけたとき、シャクナゲの赤い花をたくさん見かけた。一つひとつの花はツツジと変わらないのに、それが十個以上も集まって球状になっているのでたいそう豪華に見える。しかし、葉っぱや木の様子はツツジとはかなり異なり、同族であっても外見上はそれと一線を隔している。

 同族といえば、サツキもツツジの仲間である。しかし、両者の違いはシャクナゲツツジ以上に分かりにくい。だれでも知っているのは、木や葉っぱはもとより花まで、概してツツジの方が大きいということだ。葉っぱの質は、ツツジが柔らかく光沢がないのに対し、サツキは堅く光沢がある。葉っぱに生えた細かい毛は、ツツジが緑色でサツキは茶色をしている。

 葉っぱで興味深いのは、ツツジの花のガクや花に近い葉っぱがねばねばしていることだ。よくみると、アリや小さな昆虫がくっついて身動きできなくなっている。ある研究によると、花粉を運んでくれるチョウやハチは歓迎し、それ他の虫に対しては大切な部分を食べられないよう防御するためだという。

 そして、開花の時期は両者に大きなずれがある。サツキはツツジにかなり遅れて、その名のとおり旧暦皐月の頃に咲く。その咲き方も、ツツジが新葉に先駆けて木全体で一斉に咲きだすのに対し、サツキは葉っぱが出たあと一週間くらいの時間をかけて順次開花していく。ツツジは一つの枝に複数の花をつけるが、サツキは枝先にたいてい一つだけ花をつける。

 ツツジもサツキも、街路や庭園には欠かすことのできない大切な存在である。両者とも脇役に甘んじることが多いが、ツツジは主役としても十分その役割を果たすことができる。一方、サツキには盆栽という晴れの舞台が用意されている。その木の特性から、サツキ盆栽の愛好家はことのほか多いと聞く。

 シャクナゲは、ツツジの仲間の中では地味な存在に甘んじている。その代りといっては不謹慎だが、シャクナゲの葉っぱにはロードトキシンというケイレン毒が含まれている。薬と間違って摂取すると、吐き気や下痢あるいは呼吸困難になる恐れもある。シャクナゲは漢字では石楠花と書き、漢方強壮剤の石南葉(オオカナメモチ)と似ていることから間違いが起こっているようだ。

 これらツツジの仲間は、世界中で100属、1,350種もあるという。ドウダンツツジなど落葉するものもあるが、ほとんどは常緑樹で、葉っぱも花も綺麗なことから、私たちの日常に欠かせない存在となっている。樹形の小さいものが多いが、その割には寿命が長く、千年も生き続けるものもあるという。

 ツツジとサツキそしてシャクナゲは、私たちの日常に潤いをもたらす大切な伴侶である。いま以上に愛し、大切に育ててやりたいものだ。
(2012年5月6日)