しもやけ

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[エッセイ 342]
しもやけ
 
 ♪さざんか さざんか さいたみち たきびだ たきびだ おちばたき あたろうか あたろうよ しもやけおててが もうかゆい♪ この冬、折に触れこの歌が頭をよぎった。巽聖歌作詩の童謡「たき火」の二番である。

 寒さが厳しくなるにつれ、左足の中指と薬指が痒みを覚えるようになった。最初は気にならない程度だったが、そのうちだんだんひどくなってきた。どこかで水虫でももらってきたのだろうかと思いながらも、依然そのままにしておいた。なにしろ、目と足の先では距離がありすぎて、硬くなった体を折り曲げて間近に見ることができなくなっているのだ。

 あるとき、あまりにも痒さが続くので、無理やり背中を丸めてそれを確かめてみた。やはり、その部分は赤く腫れあがっていた。しもやけに間違いないようだ。皮膚科に行くほどのこともないので、入浴後にステロイド系の軟膏をつけてみることにした。やがて、腫れは少しずつ引き、痒みも収まっていった。

 しもやけとは、寒さのために血行が悪くなって起こる炎症のことだ。手足など血管の細い末端、あるいは肌が外気に露出している頬や鼻先、耳たぶなどがかかりやすい。そして、大人より子供、男より女がかかりやすいという。私の場合は、加齢とともに手足の血行が悪くなったためのようだ。

 しもやけを未然に防ぐには、それにかかりやすい身体の末梢部分を手袋や靴下あるいは耳あてなどで保護し、冷やさないよう心掛けることが大切である。また、そうした部分を湿ったままや濡れたままにしておかないことである。放置すると、蒸発熱でその部分が冷やされることになる。一方、血行促進に効果のあるビタミンEの含まれた食品を積極的にとるといいともいわれている。

 こうした対策は、予防だけでなく治療にも効果があるそうだ。ビタミンEを摂取しやすい食品としては、たらこ、いわし、うなぎ、小麦、アーモンド、ホウレンソウ、モロヘイヤ、緑茶、食物油、トウガラシそしてカボチャなどがある。これらにビタミンCを併用すると、さらに大きな効果が期待できるという。

 かかってしまったら、血行を促進させるための軽いマッサージやステロイド系軟膏の塗布が効果的だといわれている。患部を針で刺すといいという言い伝えは、効果が期待できないどころか、感染症にかかる危険性があるという。また、40℃の湯で温めたり、5℃冷水で冷やしたりを繰り返すといいともいわれているが、これも実際にはほとんど効果が期待できないそうだ。

 しもやけは、寒さのためにかかる季節の病である。春暖かくなれば、放っておいても自然と治ってしまう。しかし、寒くなって再び苦しむことのないよう、いまからしっかりと準備をしておくべきである。
(2012年4月29日)