アメリカフヨウ

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[エッセイ 318]
アメリカフヨウ

 ここ数年、夏になると巨大な花が目につくようになった。夏の大きな花といえばヒマワリと相場が決まっていたが、その黄色に対抗するようにピンクや真っ赤な花が咲き乱れている。そのまま通り過ぎようとしても、そのあでやかな魅力につい吸い寄せられてしまう。

 小型扇風機の羽根くらいはあるだろうか。その大きな花びらが、そよ風にヒラヒラとはためいている。写真を撮ろうとカメラを構えても、花びらが大きく揺れてなかなか焦点を合わせることができない。

 私たちの街を流れる小川の両サイドは、グリーンベルトとして整備され、その広い空間とともに住む人に潤いと安らぎを与えてくれている。その手入れは近所の人に任されているが、あるお宅の近辺では似たような花が三種類、その艶やかさを競い合っている。

 昔から見慣れているピンクのフヨウの花、少し離れた所にはハイビスカスも植えられている。ハイビスカスは、あの情熱的な赤のほか、オレンジ色の花も混じっている。そしてその中間に巨大な花が陣取っている。姿は両者によく似ているが、形は二回りも三回りもそれらを上まわっている。

 近年、秋になると、コウテイダリアの薄紫や、エンジェル・トランペットの黄色い大きなシルエットがやたらと目につくようになった。その巨大な花の現象が、最近は夏にも表れるようになった。気になったので、花の図鑑で調べてみた。もちろん、インターネットでも探してみた。

 あれは、どうやら“アメリカフヨウ”と呼ばれる花のようだ。原産地はアメリカのアラバマ州で、別名をクサフヨウ、英名をスワンプ・ローズ・マロー(Swamp rose mallow)というそうだ。アオイ科ハイビスカス属の宿根草で、花が終わるとやがて地上部は枯れ株だけが残る。翌春、そこから再び芽を出し、夏に花を咲かせる。繁殖は、種からはもちろん株分けもできるという。

 花の芯が突き出したこれらの種類は、ハイビスカスやアオイはもとより、フヨウやスイフヨウあるいは最近目につくモミジアオイなども仲間のようだ。ムクゲや綿などももちろんみな親類にあたる。

 ところで、あのグリーンベルトに咲いている巨大なアメリカフヨウだが、あれは“サウザンベル”と呼ばれる日本でつくられた改良種のようだ。丈は1~2メートルにも伸び、花の直径は30センチにもなるという。花の色はピンク、紅紫、深紅、それに白がある。花は一日花、朝きれいに咲くが夕方には枯れてしまう。

 あでやかさとはかなさこそ、この花の命なのかもしれない。
 (2011年8月8日)