水道の水漏れ

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[エッセイ 482]
水道の水漏れ

 1月中旬のことだった。水道メーターの検針に来た人が声をかけてきた。「お宅の水道は、少し水漏れしているようですよ。普段に比べ、水道の使用量が大幅に増えています。事実、水をお使いになっていないのに“パイロット”が回っていますよ」。確かに、メーター脇の小さなコマが、水が流れていることを示すようにゆっくりと回っていた。

 早めに修理すれば、漏水相当分の料金は割引きするという。さっそく、すべての水栓をチェックしてみた。水道管が敷設されていると思われる家屋の周囲はもとより、支線が通っているはずの床の下もくまなくチェックした。しかし、それらしい形跡はまったく発見できなかった。念のためにもう一度パイロットを覗いてみた。確かにそれはゆっくりと回転していた。

 翌朝、近所の設備屋に電話して点検と修理を頼んだ。かなりたてこんでいるが、翌週半ばには予定できそうだという。2日後の朝、その会社の担当者が突然訪ねてきた。「現場に出かける前にちょっと寄らせてもらいました」。彼は、あらゆる所を、漏水検知器を使って点検してまわった。まるで内科医が、聴診器で患者を診察しているようだ。しかし、不具合な箇所は発見することができなかった。あとは、軒下のコンクリートの下を掘り返して見るしかないという。

 その2日後、日本中が寒波に襲われ、わが家のあたりも大雪となった。やっと約束の日になったが、設備屋からは音沙汰がない。各地で水道管が破裂し、てんてこ舞いしているのだろうか。翌日も、またその翌日も連絡はなかった。水道局への約束の期日も迫ってきた。待ちくたびれて設備屋に電話してみた。応対の歯切れは悪かった。それでも、その2日後にはどうにか来てくれることになった。

 そして、督促の電話をした翌日、買い物から帰ってみると、例の担当者が軒下を掘り返していた。時間が空いたので寄ってみたという。漏水箇所が見つかったので、明日予定どおり修理に来るという。よく見ると、生け垣を1本抜き取り、漏水している水道管がむき出しになっていた。なんでも、じっくり点検していたら、地面がわずかに湿っているとろが見つかったということだった。

 やはり、水は配管の接続部分から漏れていた。配管をつなぎ直す工事は、予想よりずっと簡単に終わった。パイロットは、律儀に回転を止めていた。費用も最低限で済みそうだ。

 結局、今回は漏水箇所の探り当てが勝負だった。水漏れも、健康診断のそれと全く同じことだった。いかに早く、いかに的確に不具合部分を見つけ出すかである。健康診断でも、レントゲンなど各種検査機器を使っての検査はもとより、問診など医師の感に頼る部分がいかに大切であるかが実感できた。
(2018年2月11日)