梅雨の晴れ間の花園めぐり

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[エッセイ 443]
梅雨の晴れ間の花園めぐり

 季節が夏に向かうあたりから、花の数がずいぶんと少なくなってきた。そんな端境期のような時期に、一度は足を運んでみたいと思うところが市内に二カ所あった。一つは、市の北部にある山野草中心の「藤沢えびね・ヤマユリ園」である。あと一つは、ハスの花で有名な南部の「桜小路公園」という池である。

 梅雨の晴れ間の広がる日曜日、この日は北に向かって車を走らせた。有名私立大学のすぐわきに、手つかずの原生林が広がっている。その片隅に、地元の人たちがNPO法人を創って手を入れたという山野草の花園がある。入園料は300円だという。しかし、休日だというのに入園者はまばらでしかない。これでは、係員の弁当代にもならないのではと少々心配になる。

 針葉樹と照葉樹の高木が茂る原生林に、孟宗竹がかなりの勢いで入り込んでいる。そこに近隣の人たちが手を入れて、陽光を届かせ、エビネヤマユリ山野草が育つよう整備したものである。しかし、本来なら見ごろのはずのそれらの花は、まばらにしか目にすることができなかった。

 私は、原生林のような場所を散策するのが大好きだ。しかし、花を売り物にし、少額とはいえ入園料を取るとなると、それなりの準備が必要ではなかろうか。素人の作ったNPO法人で、これから里山を守っていこうとする心意気は大いに買いたいが、この状態で客を呼ぶには少々早すぎたのではなかろうか。

 翌・月曜日は、カンカン照りの中を電車でハスの池に向かった。南部の高級住宅街のど真ん中にあるが、狭い路地の入り組んだところで、道路事情のあまり良くない場所だと聞いていたからだ。ここには、道路わきに二つの小池があった。一応公園となっているが、池と土手のほかは、ほとんどスペースはない。もちろん、市立の公園なので入園料などは必要ない。

 この池は、およそ40年前、地元の人たちの努力によってハス池として再生されたのだそうだ。大きい方の池には、真っ白い舞妃蓮(まいひれん)という種類の大きな花がたくさん咲いていた。やや小さい方のはす池には誠蓮(まことはす)というピンクの花が咲いていた。こちらは派手な色をしている代わりに花の数は随分少なかった。しかし、いずれのハスも見事な咲き振りであった。

 今回訪ねた北部の山野草の花園は、地元の人たちで構成する「NPO法人里地里山景観と農業の再生プロジェクト」という組織が、また、南部のはす池は、町内の有志で作る「はす池の自然を愛する会」という団体が手掛けているという。前者はまだ2年間の手探りの経験しかないが、後者はすでに40年近い歴史を積み上げているという。いずれも地域密着型の素晴らしい活動の成果である。今後の活動に、大いに期待しよう。
(2016年7月6日)