三浦の河津桜

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[エッセイ 435]
三浦の河津桜

 わが家の近辺に散在する河津桜は、いま、満開直前の最も美しい時期に差し掛かっている。単に桜を愛でるというだけなら、それらを眺めているだけで十分である。しかし、できればもう少しまとまったかたちで豪快に楽しみたい。かくして、今年は三浦海岸駅周辺へと出かけることにした。

 現地では駐車場のことが心配なので、当初は電車の利用を考えていた。しかし、わが家から京浜急行のその駅に向かうには、4路線を乗り継ぐ必要がありかなり面倒なことになる。せっかく三浦半島に出かけるなら、できれば半島の突端まで足を延ばしてもみたい。

 そんなことから、結局、車を利用することにした。途中、道路工事で20分ばかりのロスがあったが、2時間弱で三浦海岸駅前までたどり着くことができた。道路わきには「桜祭り駐車場」という看板が設置されていた。その矢印をたどっていくと、駅裏の広々とした臨時駐車場に導かれた。

 電車を降りた大勢の人たちに混じって、線路沿いに延びる街路を桜祭りの会場へと向かった。突然、ピンクの群落が目に飛び込んできた。京浜急行の線路と歩道の間に延びるグリーンベルトに植えられた桜並木である。桜の足元には黄色い菜の花が咲き、桜のピンクとの見事なコントラストを生み出していた。

 やがて、メイン会場といわれる小松ケ池公園にたどり着いた。元は農業用水として作られた小さな池であるが、周辺の緑地とともに桜の咲く公園として整備されている。池の岸に植えられた桜が水面に映えてきらきらと輝いている。しばし、休息がてらあたりの桜を心いくまで楽しんだ。

 ここ三浦半島は、わが家のある湘南地方の続きで、気候はほぼ同じだろうと考えていた。しかし、河津桜の開花の進み具合をみると、両者には明らかな差が認められた。やはり、三浦半島は少しではあるが南に位置し、黒潮に近い分、暖かさにも違いが出ているようだ。

 ところで、ここの河津桜は、1999年に民間団体の手によって350本の苗が植えられたのが始まりだそうだ。その後、年々数を増やし、4年後にはいまの1,000本規模に達したという。桜祭りも2002年にスタートし、今年で14回目を迎えたという。本家の河津町を除けば、全国最大規模であろう。

 この町では、当初、町おこしの一環として河津町に桜の苗を分けてもらうよう頼んだそうだ。しかし、門外不出を理由にあっさりと断られた。それでも、粘り強く交渉を続けた結果、2年後にとうとう実現にこぎつけたという。

 これが先駆けとなって、全国各地で河津桜を楽しむことができるようになった。当時ご苦労された両町の方々に敬意を表したい。
(2016年2月27日)