皇居乾通りの紅葉見物

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[エッセー 409]
皇居乾門通りの紅葉見物

 この日曜日は、ホームコースのゴルフコンペに参加するつもりでいた。あらかた準備も済ませた夜の9時ごろになって、ニュースを見ていた家内が、皇居乾通りの紅葉見物に行きたいといい出した。そういえば、今年はちゃんとした紅葉見物には行っていなかった。ゴルフコンペの参加は、当日朝、現地でのエントリーとなっているので行かなければそれまでのことである。

 東京駅に着いたのは午前9時45分だった。「丸の内側のトイレは大変混雑していますので、八重洲側をご利用ください」という構内放送がひっきりなしに流されていた。50年間同駅を利用しているが、こんな放送を聞いたのは初めてである。なるほど、何処のトイレも長蛇の列ができていた。信じられないことだが、私たちと同じ目的の人たちで混雑しているのかもしれない。

 八重洲側に廻ってみたが大した違いはなかった。結局、東京駅を出るまでに15分を要した。丸の内南口を出たところから、人の群れは一本の流れとなって同じ方向に導かれていった。堀端に沿って南下し馬場先門から皇居外苑に、内堀通りをさらに南下して祝田橋交差点の手前で右折、二重橋の前で列の最後尾に着いた。こんなことなら、最初から有楽町駅から来ればよかった!

 昨土曜日に訪れた人は7万8千人と聞いていたが、その倍以上の来場者ではなかろうか。乾通りの入り口となる坂下門前まではだらだらとゆっくり歩かされた。そこで手荷物検査と身体検査があった。空港の検査機器を持ってくればいいのにと思ったが、手作業の割にはいたって手際がよかった。新年や天皇誕生日一般参賀で、多くの訓練を積んできた成果ではなかろうか。

 やっと坂下門をくぐることができた。時計は10時55分を指していた。東京駅に着いてすでに70分が過ぎていた。松の緑に混じって、色づいたモミジが散見できる。期待したよりその数は少ない。それでも、木によってそれぞれ違った色合いに染められているのが興味深い。入場者は適正人数まで絞り込まれているはずだが、それでもビュースポットでは人波に揉まれることになった。

 道のりが3分の2を過ぎたあたりで、右手の濠に架かる橋が見えてきた。このまま乾門まで行っても大した違いはないだろう。西桔橋というその橋を渡って東御苑に入った。入場者が二つに分かれ、おまけにこちらは広々としているのでゆったりと散策を楽しめた。紅葉も、松の廊下跡あたりは見事であった。大手門をくぐり、東京駅に帰りついたのは12時20分だった。

 5日間限定、チャンスは一生に一度しかないという思いに駆られてはるばる皇居までやってきた。「天皇陛下の傘寿を記念した『秋季皇居乾通り一般公開』」はこのようにして私たちの記憶に収められることとなった。
(2014年12月7日)