後期高齢犬

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[風を感じ、ときを想う日記](651)8/15
後期高齢犬

 いま、わが家には雌のダックスフンドがいる。長男家族が夏休みの小旅行に出かけるため、4日間だけ預かることにしたのだ。この犬は、かつてはわが家で10年余りに亘って面倒を見た。長男に海外赴任などの事情があったためである。彼に返して数年が経つので、犬にとっては久しぶりの里帰りといえる。

 その犬もすっかり歳をとった。実年齢は17歳と3ヵ月、人間に置き換えると85歳くらいに当たるという。目は白く濁り、まったくといっていいほど見えないらしい。後足は役に立たたず、移動はもっぱら前足だけに頼っている。下(シモ)も自分ではコントロールできず、24時間おむつが欠かせない。

 めったに吠えることもなくなった。声が出なくなったわけではないようで、なにかの拍子にキャンと一声弱々しく吠える。耳と鼻は、最低限の機能を維持しているようだが、番犬としてはもちろんあてにはできない。それに引きかえ、食欲は旺盛で食べることだけは立派にこなしている。

 それにしても、いまでは立派な後期高齢犬である。預かってくれと電話があったとき、「まさか、うちにいる間に死ぬことはないだろうな」と念を押したほどである。たしかに今は元気だが、これから先何があってもおかしくはない。

 犬の寿命の半分以上の歳月を彼女と過ごし、久しぶりに手元においてみて、生きとし生けるものの諸行無常をいまあらためて実感しているところである。