八月の風

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[風を感じ、ときを想う日記](650)8/10
八月の風

 今月の「ゆうゆう通信」には、巻頭の挨拶として次のような小文を載せた。

 ・・・今日も、朝から蝉しぐれが降り続いています。そのセミたちの運命を、私たちは可哀そうだと思うことがあります。長い地中生活に比べ、地上の期間があまりにも短いためです。

 しかし、それは私たちの余計な心配なのかもしれません。地中は、こちらの想像よりずっと棲みやすいところのようです。温度や湿度は安定し、木の根っこにしがみついてさえいれば飲食に困ることもありません。そしてなにより、外敵がほとんどいないのが魅力です。

 
 彼らにとっては、地上での最終章こそ過酷な時間です。厳しい環境の中で、命をすり減らしながら伴侶を求め、立派な子孫を残さなければならないという大仕事があるのです。

 
 それに比べ、私たちの後半生はなんと穏やかなことでしょう。あとは健康あるのみです。・・・

 いま、台風11号が本土を直撃し、日本中を強風と豪雨の渦に巻きこんでいる。長い地中生活から抜け出し、これから最後の大仕事に取りかかろうとしているセミたちも、その渦中に巻き込まれているはずである。

 彼らは、はたして大嵐を乗り越え大任を果たせるだろうか。