増税前夜の買い溜め狂想曲

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[エッセイ 393]
増税前夜の買い溜め狂想曲

 “金・土・日 トリプルハッピーデー ほとんど全品5%オフ”こんな甘いキャッチフレーズに誘われて、雨の中を出かけていった。ちょうど10時に着いたが、9時開店のこのスーパーの駐車場はすでに満杯になっていた。店内も予想以上に混雑しており、衣料品のレジには長蛇の列ができていた。

 消費税の引き上げまで余すところあと1日に迫った。住宅関連や自動車などの高額品には早くから動きがあったが、身の周りの品物に波及してきたのはこの数週間である。缶詰など保存のきく食品や日用品が飛ぶように売れていく。例によって、トイレットペーパーも普及品から順次姿を消していった。

 各家庭には、買いだめされた品物が処せましと積まれる。やがて、賞味期限が迫って、毎日缶詰を食べ続けるなどという光景があちこちで見られるようになるかもしれない。欲しいと思って買ったはずの大型商品は、結局粗大ゴミとして処分される運命をたどることになるかもしれない。
 
 企業にあっては、2月決算の会社と3月決算の会社で業績に大きな差が出てくるはずだ。2月決算の会社は、2年連続して安定的に増収増益を確保することになるだろう。一方の3月決算の会社は、当年度は大幅増収増益になっても、新年度はそれ以上の減収減益決算を余儀なくされることになるだろう。
 
 増税のとき、なぜこうした現象が現れるのだろう。商品の供給側にも消費者側にも恐怖心と焦りが募ってくるためではなかろうか。供給側は、競争相手に出し抜かれるかもしれない。業界内で置いてきぼりを食うのではないか。そうした恐怖心に欲がからんで、必要以上の行動を起こすことになる。
 
 消費者側も、その風潮に乗らないと世間から置いていかれるかもしれない。いま買っておかないと大きな損をすることになるのではないか。いま商品を確保しておかないと、売り切れになってしまうかもしれない。そうした恐怖心、焦り、そして欲が買いだめという行動に駆り立てるのではなかろうか。

 供給側は、増税後も連続して来店してもらえるよう、4月分の日替わり割引券を発行して客の囲い込みを図ろうとする。そして、反動減を極力抑えようと増税幅以上の値下げを断行するはずだ。客は、4月になって、こんなに値下がりするのだったら、あわてて買うのではなかったと残念がるはずである。

 消費者にとって、買い控えこそ最大の生活防衛である。4月に、たとえ値下がりすることがなくても、10,000円で300円、100万円でも3万円ほど損になるだけのことだ。間違ってなにか一つでも要らないものを買ってしまえば、駆け込みによるお買得などいっぺんに吹き飛んでしまう。

 4月になれば、多くの物は反動で必ず増税分以上に値下がりするはずである。
(2014年3月31日)