PM2.5

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[エッセイ 388]
PM2.5

 先日、帰省した折のことである。朝食を済ませ、借りてきた車に乗りこもうとしてびっくりした。フロントガラスやボンネットはもとより、側面のドアにまで火山灰のようなものがびっしりと付着していた。それが、折からの小雪に濡れてまだら模様になっていた。黄砂だろうか、あるいはPM2.5だろうか。

 冬から春にかけては、強い西風に乗って中国からいろいろな微粒子が飛来してくる。それにしても、西日本ではその影響をこんなにも大きく受けているのだろうか。車が小雪に濡れていたのですぐわかったが、普段は少し視界が悪い程度にしか考えられていないのかもしれない。

 この、PM2.5 やPM10と呼ばれる粒子状物質とは、マイクロメーター級の固体や液体の微粒子のことをいうそうだ。主に、燃焼で生じた煤、舞いあがった土壌粒子や粉塵のほか、燃焼による排出ガスや石油からの揮発成分が大気中で変質してできる粒子などからなる。粒子状物質という呼び方は、これらを大気汚染物質として扱うときに用いるのだそうだ。

 PM2.5の、PM はParticulate Matterの頭文字、2.5は粒子物質の大きさのことで粒子径が2.5マイクロメーター前後またはそれ以下のものを指すそうだ。杉花粉の10分の1以下、髪の毛の30~40分の1程度にあたる。このPM2.5より少し大きい10マイクロメーター級をPM10として分類している。ちなみに、1マイクロメーターとは1メーターの100万分の1にあたる。

 この微粒子物質は、私たちにどのような悪影響を与えているのだろう。環境面では、金属の腐食、塗装面や人工構造物の劣化、酸性雨、視程悪化、地球への日傘効果・薄暮化、そして光化学スモッグなどが考えられる。健康への影響は、気管支炎や喘息の原因になるという。これらが、肺胞などに付着して肺の血管を傷つけ、そこでできた血栓が脳の血管を詰まらせることもある。また、PM2.5のついた花粉を吸い込むと花粉症が悪化するともいわれている。

 日本の環境基準は、1年の平均が15マイクログラム/立米までで、かつ1日の平均が35マイクログラム/立米までだそうだ。それが70マイクログラムを超えると身体に影響が出る恐れがあるという。ただし、日本は、いまのところどこもまったく心配はないそうだ。お隣の中国は深刻で、もっとも汚染の進んだ地域の値は300マイクログラム/立米にまで達しているという。

 日本の大気汚染発生源を国別にみると、全国平均で日中がほぼ半々になるそうだ。ただ、九州に限定すると、中国発が6割を占めるという。そうかといって、九州の西側に大きな防塵幕を張り巡らせることなどできそうもない。ここは、彼の国と公害防止や砂漠緑化について協力し合っていくしかなさそうだ。
(2014年1月29日)