幽玄のコンサート

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[風を感じ、ときを想う日記](597)9/24
幽玄のコンサート

 昨夜、白旗神社境内の特設ステージで、琴と尺八、それに雅樂のコンサートが開かれた。この日は、日ぐれを迎えると急に気温が下がり肌寒さえ感じられた。空は黒雲で覆われ、時折小雨もぱらついていた。強風が渦巻き、境内の森に茂る楠木の巨木を大きく揺らしていた。

 舞台は、六畳ほどの板敷きの台とその背面に張られた幕だけの簡素なものだった。それが、木々に囲まれた広場にしつらえられている。照明は、数基のスポットライトと篝火だけ、まるで薪能の舞台を想わせる。日本の伝統的な楽器の演奏会は、こんな雰囲気の中で開かれた。

 有名奏者による琴や尺八の独奏、そして両者の掛け合いが聴く人の心を揺らす。ぱらつく小雨に琴やきれいな和服が心配だったが、奏者たちはそれらを気にも留めないで、古典的な曲から現代の童謡までおよそ10曲を披露した。舞台後半は、およそ20人による雅樂が華やかに奏でられた。

 ときおり、ゴーゴーという音が聞こえてくる。雷が鳴り出したのかと思ったら、強風がマイクをよぎる風切音だった。時折、救急車がピーポーピーポーと警報音を鳴らしながら駆け抜けていく。すぐ近くには市民病院があるのだ。そんな嬉しくない環境なのに、それらの雑音はまったく耳に届いてこない。

 仲秋の幽玄の世界で、伝統楽器によるコンサートは粛々と進んでいった。