タイの水害

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[風を感じ、ときを想う日記](469)10/21
タイの水害

 ・・その翌日は、チャオ・プラヤ河上流にある古都アユタヤと、山田長政が拠点にしたという日本人村の遺跡を訪ねることにした。船で大河を溯るのも一興ではあるが、さすがにそれは選択肢の中にはなかった。

 バンコク市街を一歩出るとそこは一面の湿原だった。稲を刈った後なのか、もともと湿原だったのか、アユタヤまでの一時間半、両側は見渡す限り水に満ちていた。そういえば、前日行ったサンブラーン象公園までの両側も、毎日歩いたバンコク市内の側溝も、水があふれんばかりに満ちみちていた。・・
 
 これは、私が初めて書いたエッセーの一部である。9年前、タイに旅行し、その印象をまとめたものだ。標題は単に「水」とした。普通なら、「タイ」とか「バンコク」とするはずだが、よほど水の印象が強かったのだろう。

 タイはいま、その水で大変なことになっている。人々の困り果てた様子が、テレビの画面からリアルに伝わってくる。近代的な工業団地も、ことごとく水攻めに遭っているという。大震災の災禍からようやく立ち直ろうとしている日系企業も、ほとんどが操業停止に追い込まれているようだ。

 水がないと人は生きてはいけないが、あり過ぎても人々は苦しめられることになる。タイ政府と国民の自助努力はもとより、国際社会の強力な支援も得て、水害を早期に乗り越えられることを期待したい。