シイタケ栽培

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[エッセイ 308]
シイタケ栽培

 知り合いから、シイタケの栽培キットをいただいた。一般には、“菌床”と呼ばれているものである。以前、菌を埋め込んだ“ホダ木”をもらって育てたことはあるが、こんな人工的なものは初めてである。

 菌床とは、広葉樹の材木チップにシイタケ菌を培養させて固めたものである。長方形の柱を短く切ったような形で、その寸法を測ってみたら、18センチ×12センチ×8.5センチあった。

 説明書によると、菌床に水分を十分浸透させるため、水を張ったバケツに一昼夜浸けておく。取りだした菌床に割りばしなどで脚を4本つけ、2~3センチ浮かせた状態で受け皿に置く。それを日陰において、1日4回くらい霧吹きで湿らせる。乾燥を防ぐため、ビニール袋をかぶせておくといい・・そうだ。

 翌日には、さっそく芽のようなものが生えてきた。それがどんどん大きくなっていく。翌々日には、はっきりとキノコの形になった。3日目には、大きいものは食べられるくらいにまで成長した。さっそく摘み取ってうどんに入れてみた。香りも口当たりもふくよかで、想像以上においしかった。夕食には、今度は焼いてみた。香りはさらに強く、味はまろやかさを増した。

 4日目、5日目になると菌床一面に隙間もないほど生えてきた。ただ不思議なことに、生えてきたのは前面と両側面だけで、他の部分にはまったく姿が見えない。一斉に大きくなったので、毎日少しずつ摘み取っては賞味するということができなくなった。仕方がないので、残り全部を切り取り干しシイタケにすることにした。結局、生えてきたキノコは全部で50個にのぼった。

今回の主人公であるシイタケは、クヌギ、シイ、ナラ、あるいはクリなど広葉樹の枯れ木に生えるキノコである。東南アジアとニュージーランドが原産だそうだが、食用にされるのは、日本、中国、それに韓国が中心のようだ。そんなことから、英語でも“shiitake”とよばれている。

 人工栽培が大変盛んであるが、この技術が確立されたのは20世紀になってからだそうだ。かつては、ホダ木という短く切った原木で栽培していたが、いまでは菌床での栽培が主流になっているという。全国いたるところで見られるが、宮崎の干しシイタケと徳島の生シイタケがとくに有名である。

 菌床栽培は、一度収穫した後でもまた芽が出てきて、二度三度と採れると聞いていた。しかし、わが家の菌床は一度に頑張りすぎたせいだろうか、それっきりあのかわいい姿を芽吹くことはなかった。

 あいにく、梅雨が目前に迫っていた。収穫したシイタケは、お日様とにらめっこしながら、なんとか干しシイタケらしい姿に仕上げることができた。
(2011年6月15日)