悪夢の序章

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[風を感じ、ときを想う日記](422)3/12
悪夢の序章

 所用から帰って、車を車庫に入れようとしているときだった。車が大きくゆすられ、ハンドル操作ができなくなった。すぐ地震だと気がついた。かなり大きな揺れだった。車庫入れを中断し、揺れの収まるのを待つことにした。

 向かいの家が大きくゆすられている。その前にとめられた車が激しくバウンドしている。周囲の植木や電柱の先端が左右に大きくしなっている。私の車は、悪意を持ったキングコングにゆすられているかのようだった。いま車の外に出たら危ない。なにが落ちてくるか、どんなものが飛んでくるかわからない。

 揺れはずいぶん長い時間続いた。ゆすられながら、33年前の宮城県沖地震の恐怖体験が頭をもたげた。小松左京の「日本沈没」のシーンが思い起こされた。はす向かいのおばあちゃんが玄関から姿を現した。隣の奥さんが外に飛び出してきた。揺れは急速に収まってきた。

 「怖くてしょうがないから、とにかく外に出てきたの。こんなときどうすればいいんですかね」「ニュージーランドならともかく、日本では家の中にいて、テーブルの下に身をかがめているのが一番安全ですよ」。事実、家内は愛犬を抱いてそうしていたそうだ。

 やれやれとみんなで胸をなでおろしたが、これは史上最大の悪夢の序章でしかなかった。そのころ、巨大な津波が日本列島のすぐ目の前まで迫っていた。