NHKのど自慢

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[エッセイ 290]
NHKのど自慢

 私の住む町は、今年市制70周年を迎えた。その記念行事の一環として「NHKのど自慢」が行われることになった。予選会は9月4日、本番の生放送は9月5日の日曜日の予定である。一生に一度くらいはテレビに出てみたいと思い、応募要領に従って出場を申し込んだ。もちろん、ついでに観覧の方も申し込んでおいた。

 そのNHKのど自慢は、私も日曜日のお昼に毎回欠かさず見るようにしている。老若男女、上手い人も音痴を自任する人も顔を出す。ときにはハプニングもあって、素人芸の面白さがふんだんに織り込まれた楽しい番組である。原則生放送というのも、その魅力を一層引き立てているのではなかろうか。

 のど自慢は、終戦翌年の1946年にスタートした60年以上の歴史をもつ超長寿番組である。司会者にも結構長く務めた人がいる。宮田輝アナと金子辰雄アナはいずれも17年間も担当したそうだ。立ち上がり当初はラジオだったが、1953年からはテレビでも放映されるようになった。各都道府県を年1回は回るようにしているというが、北海道だけはなぜか複数回になっている。

 放送予定が決まると、当該地域の住民には自治体の広報誌などで周知される。出場希望者は、歌いたい曲名や住所・氏名などの必要事項を往復ハガキに書いて申し込む。応募者は毎回多数に上るらしく、抽選で予選会出場者を250組に絞りこむ。放送日前日の午後にはぶっ通しで予選会を行い、本番出場者20組を選定するそうだ。選考基準は必ずしも上手い順ではなく、番組が最も盛り上がるメンバー構成になるよう配慮されているらしい。

 ところで、私が申し込んだ結果はどうなったのだろう。締切日から2週間が経とうとしているのに、抽選の結果はいまだ知らされてこなかった。イライラが頂点に達しようとしているとき、返信用のハガキがやっと手元に届いた。

 その裏面には、申し込み件数が予選会出場定員を大きく上回る1,879通もあったこと、その中から250組を選出したが私の枠はそこから外れたということが記載されていた。観覧申し込みの返信には、6,976通の応募があり、抽選の結果はこちらも選に漏れたと書かれていた。

 申し込み直後から練習にとりかかったが、歌詞が覚えられなくてたいそう苦労した。年のせいだろうか、あるいはカラオケ文化に毒されて画面の歌詞に頼る癖がついてしまったためだろうか。やっと覚えたら、今度は本番で度忘れしてしまうのではないかと心配になってきた。いっそ手のひらに書いておこうかとさえ考えていた。

 そんな心配も、今となっては単なる取り越し苦労でしかなくなった。
(2010年8月21日)