箸が転がっただけで

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[風を感じ、ときを想う日記](306)10/15
箸が転がっただけで

 女の子が成長すると、やがて箸が転がっただけで可笑しさを感じる年頃を迎える。彼女たちにとっては、見るもの聞くものすべてが新鮮であり、驚きにつながるときである。その天性の明るさが、それらを前向きにとらえようとしている証でもあるのだろう。

 古希を迎えた私たちの世代が、ある種そんな心境になりつつある。人との出会いがとにかく嬉しく、そして楽しい。高校時代の同級生との出会いともなると、その喜びは極致に近いところまで昇華していく。半世紀を超える知故なのに、お互い会うたびに新鮮な驚きを見出すことができる。
 
 その同級生8人が、今週の初め一泊二日で箱根に集まった。いつものように語りあい、飲み、歌い、そしてまた語りあう。すでに枯れた存在のはずなのに、その片隅に意外な若さが隠されている。すでに互いを知り尽くしているはずなのに、また新たな一面が表れてくる。
 
 一夜明ければ、自慢のパワーをゴルフで競い合う。みんなの口からは、「こんなはずではなかった」ばかりがもれてくる。それでも、互いにけなしあい足を引っ張りあう。たまには褒めあったり、心底から体調を気遣いあったりもする。

 還暦を機にUターンした私たちの感性は、磨きがかけられて箸が転がっただけで可笑しさを感じるところまで戻っていこうとしている。