頭皮のなやみ

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[エッセイ 252](新作)
頭皮のなやみ

 昨年の夏ごろから、頭とくに後頭部が痒いと感じられるようになってきた。痒さとともに、フケもたくさんでるようになった。うっかり引っ掻いたりすると、小さなカサブタが爪の間にくっついてくることもある。湿疹でもできているのだろうか、自分の後ろ頭でははっきりと確かめることもできない。

 市販の湿疹の薬をつけてみたが全く変化がない。副腎皮質ホルモンの軟膏に変えてみたらすぐにも効果が確認できた。しかしこの薬は副作用も強い。長期間使っているとその部分が黒ずんでくる。とくに直射日光は禁物だそうで、頭のてっぺんにいつまでも塗っておくわけにはいかない。結局、非ステロイド系の軟膏を使い続けたが、効果のないまま我慢の日々が続いた。

 ある日、頭を掻きながらパソコンに向かっていると、そばにきた家内がびっくりしたような声をあげた。「なに、そのフケは。襟から肩にかけて真っ白じゃないの」。黒いブルゾンを脱いでみて、雪でも積もっているようなその惨状にあらためてショックを受けた。

 フケと聞いて、ひょっとするとシャンプーを変えたのが原因かもしれないと思った。もう1年も前になるが、家内からシャンプーのいただきものがたまっているので、別の銘柄になってもいいかと聞かれそれに従ったのだ。いままでのものは、私が30歳代半ばのころフケに悩む私を見かねて職場の上司がすすめてくれたものだ。以来30年以上も花王のメリットを使い続けている。

 思い立ったその日のうちに、長年愛用してきたあの銘柄を買ってきた。効果は1週間もしないうちにあらわれた。1ヵ月を超える時間が過ぎたいま、あの悩みはなんだったのかと思えるほどに回復した。

 私たちの頭皮には、フケ原因菌といわれる真菌やカビが棲みついているそうだ。それらが異常に増えると、角質の入れ替わりが早められ、頭皮のかゆみや大量のフケが出てくるという。日ごろ、私たちの頭皮は弱酸性に保たれている。そこに棲みついているフケ原因菌は、その弱酸性がもつ抗菌作用によって増殖が抑えられているという。

 一方、一般に使われているシャンプーは弱アルカリ性だそうだ。界面活性剤によって洗浄効果を高めるためだそうだが、それによって頭皮の酸は中和され殺菌効果も大きく削がれることになるという。普通の人ならそれによる副作用も心配ないようだが、フケ症の人にとってはフケ促進剤になってしまう。

 私が永年使い続けてきた弱酸性のシャンプーは、その悩みをもつ人のために開発されたものである。1970年発売というから異例の長寿商品である。

 それにしても、フケに悩まされたこの1年はなんだったのだろう。
(2009年7月26日)