健康食品

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[エッセイ 98](既発表 4年前の作品)
健康食品

 先日、新聞に2004年分の高額納税者リストが載っていた。いままであまりお目にかかったことのない健康食品販売会社の会長や社長が、50位以内に6名も入っているのが目を引いた。

 そういえば、その翌日放送されたテレビ東京の「開運!なんでも鑑定団」にも、同業の女社長がお金持ちとして登場した。あるスナック経営者が店の建て直し資金にと、380万円で手放すことになった「ハリー・ウィンストン」の腕時計を、なんと480万円で購入したのだ。

 健康食品販売業といえば、ここ数ヵ月、名古屋のある会社が近所で宣伝活動を展開している。ビルの1階を借り切り、売りたい商品の説明会を行う。聞きにきてくれた人には、数千円もするその商品をただまたはただ同然で配る。1日に2~3回同じ商品で同じことをくり返す。1回当たりの説明は10分から20分、場合によっては1時間以上に及ぶこともある。

 座席は40~50あるがいつもほぼ満席のようである。毎週月曜日から金曜日まで、手を変え品を変えてもう2ヵ月以上も続いている。約3ヵ月で打ち切り次の目的地に移動するが、この間に会員を集め、以降は通信販売に切り替えるそうだ。

 説明会に参加している顧客は大半が年配の女性で、その多くが常連と化している。他の業者も周辺で同じようなことをやっているようで、毎日数ヵ所を回るマニアのおばさんもいるそうだ。家内も、最近は時間に余裕ができたので、気が向くと出かけていって海苔や蜂蜜といった「健康食品」をもらってくる。そのうち、入会して高いものを買わされるのではないかと心配しているが、それはどうやら杞憂に終わりそうである。

 それにしても、これだけの手間と経費をかけて、なお何人もの高額所得者を生み出すところをみるとかなりぼろい商売のようである。いったい健康食品とはなんだろう。通常の食品とどこが違うのだろう。一歩踏み込んで、薬用食品とどう違うのだろう。はたして、高いお金を出して買い込むだけの価値があるのだろうか。

 食品を個々に見てみると、必ず一長一短を併せ持っている。そうした中で、なにか特別に優れた要素を含んだものを健康食品とよぶのだろうか。そして、突出した要素を含んだものを薬用食品というのだろうか。しかし、なにかプラスのものを持っているとすれば、それに匹敵するマイナスの要素も含んでいるはずである。健康の維持にはすべての要素がまんべんなく必要である。

 健康食品とよばれる特定の要素に偏った食品の摂取は、それに相当する負の効果を呼び込んでしまうことになる。多種多様な食材とバランスのとれた調理こそ健康のキーワードであり、感謝の気持ちと腹八分目の食事こそ長寿の秘訣である。
(2005年5月31日)