クリスマス・イヴ

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[風を感じ、ときを想う日記](232)12/25
クリスマス・イヴ

 クリスマス・イヴといえば、銀座に繰り出すのが普通であった。猫も杓子も銀座に集まり、ただ歩道をぞろぞろと歩いた。中央通りは、ラッシュ時の新宿駅のように、歩道からあふれんばかりに混みあっていた。やっとの思いで空席のある喫茶店を見つけ、ケーキ付の普段の何倍もするコーヒーを注文した。

 数年も経つと、今度はパブやバーがこぞってパーティー券を売るようになった。パーティーといっても、店内をそれらしく飾りたて、ジングルベルを流して客に三角帽子とクラッカーを配るくらいのことである。その一方、職場や学校ではダンスパーティーが盛んになってきた。

 人々が家庭に回帰するようになると、駅前ではケーキの販売合戦が始まった。帰りの電車は、大きな箱を抱えたお父さんたちで早い時間から混みあった。自宅近くの駅前でも、ケーキの販売合戦は繰り広げられていた。箱の中身を心配しながら、わざわざ遠くから買って帰る必要などまったくなかった。

 この半世紀の思い出に浸っているうちに、いつの間にか夫婦二人だけの静かなイヴに戻っていることに気がついた。昨夜は、イチゴののった小さめのショートケーキが、クリスマス・イヴをささやかに演出してくれた。家内は、そのとき飲んだコーヒーで、日付が変わるころまで寝付かれなかったそうだ。