バナナダイエット

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[エッセイ 222](新作)
バナナダイエット

 わが家では、バナナが数本、いつでも食べられるよう台所の棚の上に用意されている。ところがここ数カ月、いつものところにいつものものが見当たらない。なんでも、そのバナナが市場で極端に不足しているのだという。

 近所のスーパーを覗いてみると、「先日のTV放映の影響により、バナナが全国的に品薄になっております」という表示があり、棚に品物がなかったり、あっても熟し切らないものが並べられたりしている。値段はそれほど高くなってはいないが、特売など望むべくもない。

 そのテレビ放送とは、6月5日放送のNTV「おもいっきりイイ!?テレビ」と、9月19日放送のTBS「ドリーム・プレス社スペシャル」ではないかと思われる。前者は、ブームの兆しの出始めたダイエット本・「朝バナナダイエット」を紹介したもの、後者はその著書にもとづいてオペラ歌手の森公美子がダイエットの実践に挑戦するという番組であった。結果は、110キロから103キロへ、1ヵ月半で7キロの減量に成功したという。

 「朝食にバナナ+お水」だけで簡単にダイエットができるという妙案は、かなり以前から提案されていた。それが3月に単行本として出版されると、がぜん注目を集めるようになった。渡辺仁、澄子夫妻の“はまち。”というペンネームによる著作は、続編も含めるといままでに70万部以上を売ったという。

 バショウの仲間であるバナナは、多年草の草木である。その起源は5千年から1万年前にさかのぼるという。実は果物ではなく野菜だそうだ。バナナベルト地帯とよばれるアジア、アフリカ、中南米などの熱帯地方で栽培されている。

 明治後期以降台湾から輸入されるようになり、大正後期には相当量に上ったという。傷みやすい品物なので、その中継港である門司では処分促進のために「バナナのたたき売り」まで編み出されたという。

 戦後は外貨が乏しく、バナナは高根の花になった。それが、1963年(昭和38年)に輸入自由化されると、庶民も気軽に口にできるようになり、現在まで卵とともに物価の優等生を守り続けている。いまでは、国民一人当たり年間8キロ弱が消費されている。そのほぼ全量、年間約100万トンがフィリピンなどから輸入されている。これは、全果物輸入量の6割弱にあたるという。
 
 バナナは、生でそのまま食べられることが多いが、ヨーグルトに入れたり油で揚げたりするのも悪くない。とくに、牛乳や生卵を加えた通称ゴールデンジュースは、味はもとよりスタミナ源としても得難い逸品である。
 
 バナナに水だけなどといわず、もうひと工夫、もうひと手間加えれば、朝バナナも彩り豊かなご馳走になるのではなかろうか。
(2008年10月25日)