お盆

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[エッセイ 68](既発表)
お盆

 8月13日からの4日間は月遅れのお盆にあたり、日本中がその行事でにぎわう。もとは、旧暦7月の13日を迎え盆、16日を送り盆といい、15日を中心としたこの4日間全体をお盆といった。新暦の今も、東京などごく一部の地域では7月をお盆としているが、他の大半の地域では月遅れの8月同日にお盆の行事がおこなわれている。そのお盆についてホームページを閲覧していたら、大変わかりやすい説明がでていたのでその一部を拝借することにした。

 お盆とは、正しくは盂蘭盆会(うらぼんえ)という。釈尊の弟子の一人、目連尊者という人が神通力で亡き母の姿を見たところ、母は餓鬼道に落ちて苦しんでいた。何とかして救いたいと釈尊に尋ねると、「7月15日に、過去七世の亡き先祖や父母たちのためにご馳走をつくり、僧侶たちに与え、その飲食をもって供養するように」と教えてくださった。彼がそのとおりにすると、目連の母親は餓鬼道の苦をのがれ、無事成仏することができた。この故事が、盂蘭盆会の始まりといわれている。(宗教法人等のホームページをもとに要約)

 お盆には、先祖や亡くなった人の精霊(しょうりょう=霊魂)が家に帰ると信じられている。13日の夕刻、迎え火を頼りに家に帰る。14日、15日と家にとどまり、16日の夜送り火に送られてあの世に帰っていく。この間、精霊を迎えるための精霊棚を用意したり、お供え物をそなえたり、精霊を慰めるための盆踊りを催したりと一連の付帯行事が行われる。

 この4日間を挟んで帰省ラッシュがおこる。女房と子供をつれ、お土産をいっぱい提げて故郷のおじいちゃんおばあちゃんのもとへむかう。テレビニュースでは、ターミナル駅の混雑の様子を映し出し、乗車率200パーセントなどと報じる。古来、「盆暮れ」という言葉があるくらいお盆は夏の重要な区切りである。真夏の、暑い盛りにその年の前半の区切りをつけ、家族全員がそろって先祖の供養をする。仏教徒でなくとも、たとえ宗教行事がなくても、暑さが峠を越えるこの時期になると、なぜかそうしたくなる雰囲気が漂ってくる。

 平成初頭、父が他界した1ヵ月後、飛行機で出張する機会があった。なぜかその時、「上空に上がれば父に会えるかもしれない」と本気で思った。もしかして、旧暦8月中旬になると本当に精霊が帰って来るのかもしれない。一抹の寂しささえ感じさせる夏の後半は、多くの人がそれを信じたくなるような不思議な霊につつまれる時節なのかもしれない。

 地方の過疎化が進み、帰省者の数も年々少なくなってきた。休暇は少しずつ長くなり、帰省ラッシュも平準化してきた。日本の高度成長を支えたあの凄まじい帰省ラッシュのエネルギーは、もう二度と帰ってこないのだろうか。
(2004年8月7日)