さくらんぼう

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[エッセイ 62](既発表 4年前の作品)
さくらんぼう

 先日、家内がさくらんぼうを1パック買ってきた。見れば、佐藤錦というブランド品である。珍品なのでびっくりしていると、JR駅前の青果店で客寄せの目玉として1パック300円で特売していたのだという。翌日の朝食で賞味したが、見た目はもとより風味や食感も間違いなく本物であった。

 後で新聞の織り込みチラシを見たら、近所のスーパーでは本日限定品として1パック380円で売出し中とあった。1パック40個近く入っているので、畑のダイヤモンドも1個10円程度で口に入ることになる。

 そういえば、前日の月曜日は台風の襲来で日本中が大変な騒ぎになっていた。山形県では、さくらんぼうのビニールハウスが吹き飛ばされたとか、せっかく実ったさくらんぼうが、ほとんど落とされてしまったといったニュースが流れていた。

 さては、あのさくらんぼうは台風で落されたものだったのか。それにしては早すぎる。では、台風の襲来を見越して早めに安く出荷したのだろうか。みぞおちのあたりに、何かすっきりしないものが残ってしまった。
 
 桜の木は日本中でお目にかかることができるが、その実は小さくて黒っぽくとても口にできるようなものではない。では一体、あのかわいらしいピンクの果実はどのような木に実るのだろう。広辞林を開いてみた。「さくらん坊」の欄に、 蔑)▲ウトウの実。初夏、赤黄色に熟す。普通「さくらんぼう」というのはこれをさす。・・と説明されていた。では「オウトウ」とは。桜桃と書く。広辞林では、.汽ラの変種。赤い実がなり「さくらんぼう」といって食用とする。種類が多い。・・とあった。
 
 普段の生活にはあまり縁のないさくらんぼうであるが、一体どれくらいの量が生産されているのだろう。2002年度のデータでは、生産量は山形県中心に約2万1千トン、日本人1人あたり平均24個に相当するそうだ。

 さくらんぼうのことを調べていたら面白いことに気がついた。桜桃の木は、みかんと同じようにすべて接木であった。さらに、桜桃の木は自家不和合性といって、普通は自家受粉をしないそうだ。このため、同じ場所に2本以上の木を植えてやらないと実がつかないようである。これは、強い子孫を残し繁栄していくために、自家受粉による劣性遺伝を防ぐのがねらいと考えられる。
 
 生物は、オスとメスによる増殖システムが確立して以来飛躍的に進化したという。優秀な子孫を残すには、遺伝子のなるべくかけ離れたもの同士の結婚がいいといわれている。ハーフに美人が多いのも、こうしたことが根拠になっているようだ。ひょっとすると、桜桃の木はもっとも進化した植物なのかもしれない。

 さくらんぼうをたくさん食べて、ハーフを超える美人になろう。
(2004年6月26日)