トイレのトラブル

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[エッセイ 190](新作)
トイレのトラブル
 
 近所のお宅から、パリパリの青い葉っぱのついた立派な大根をいただいた。大根本体はもちろん、葉っぱも私の大好物である。青い柔らかい部分を茎から削ぎとり、塩もみにするか油揚げと一緒に煮るといっそう食が進む。

 残った葉っぱの茎を、市指定の有料ごみ袋に入れようとしたがどうも入りきれそうにない。燃えるごみ収集日の、前日夕方のことである。思案顔の家内をみて、私は細かくちぎって流してやるよとトイレにもっていった。

 タンクから流れ出した水は、溢れんばかりにそのまま便器に残った。あれだけ小さく千切ったのに、葉っぱの茎は途中で引っかかってしまったようだ。太目の針金でつついてみたが、なんの手ごたえもなかった。ついには手も突っ込んでみたが、それでもなにも探り当てることはできなかった。

 翌朝、意をけっし分解作業に取りかかった。水道の元栓を締め、便器やタンクのビスとボルトを全部抜きとった。汚水が漏れ出さないよう気をつけながら便器を動かそうとした。しかし、それはビクともしなかった。家内に手伝ってもらっても結果は同じであった。これ以上続ければ、腰を痛めかねない。

 タウンページには大きな広告がたくさん出ていた。どの業者を選ぶか。下水管洗浄の、詐欺まがいの事件がチラリと頭をかすめた。業者は、7千円から1万円という見積りでやってきた。彼は、大型の吸引機であれこれ試していた。

「もう、これ以上は無理です。後は分解掃除しかありません。税込み、36,750円かかりますがどうしますか」。私はおもわず「負けた」とつぶやいた。私があれだけ苦労した分解作業を、彼は一人で簡単にやってのけた。

 業者が帰った後、今度は私の心が汚物で詰まったようなウツ状態に陥った。吸引作業は形だけで、最初から分解作業にもっていくつもりだったのではないか。いくら汚い作業だからといっても、あの料金体系には納得できない。後の祭りと知りながら、いくつもの愚痴が口をついて出た。

 それにしても、もっと詰まりにくい便器を開発できないものだろうか。実験データなどもちろんないが、穴の径を1センチ広げるだけでトラブルは半減するはずである。現状でも、便器の側面に点検窓を設けるだけで、メンテナンスは見違えるほど容易になるはずである。メーカーは、それができない理由をたくさん並べるであろう。しかし、世界に冠たる「ウォシュレット」を開発した一流メーカーである。そんなことくらい簡単にクリアできるはずである。

 わが家では、10リットル入りの有料ごみ袋を週2枚、年104枚使うことになる。1枚20円、年2,080円の出費である。36,750円との比較が話題になるたびに、11月22日(いい夫婦)から遠ざかっていきそうである。
(2007年11月25日)