大船植物園

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[エッセイ 169](新作)
大船植物園
 
 近所でも、あちこちでバラの競演が始まった。赤あり黄ありピンクありと、実にきれいで豪勢である。咲き出したばかりの花には勢いがあり、しかも初々しくみずみずしい。これだけの花がまとまって咲いているとしたら、もっと見事な光景になるはずである。

 突然の思いつきであったが、とにかくフラワーセンター・大船植物園まで出かけてみることにした。9時半には着いたが、駐車場の空きはもう数台分しかなかった。平日のまだ早い時間だというのに、この人出は一体なんなのだろう。

 バラ園は実に華やかであった。350種、1,200株にもおよぶバラの群落が、きらびやかに着飾って私たちを別世界へと誘う。日本には、こんなにもたくさんのカメラマンがいたのだろうか。おばあちゃんまでが、大型一眼レフのデジカメを携え三脚まで用意している。

 2年前、ツアーでロンドンを旅した。イギリスといえばバラが有名である。フリータイムには、躊躇なくリージェンツ・パークにあるクイーン・メアリー・ローズ・ガーデンというバラ園を訪ねた。季節もよく、花も見事であった。しかし、いま考えてみると、この大船にはおよびもつかなかったように思う。

 ところで、この植物園は、もとは神奈川県の農業試験場であった。それを、昭和37年にフラワーセンターに衣替えし、一般公開するようになったという。総面積63,900平方メートル、植えられている花木、樹木は57,000種にもなるそうだ。なかでも、菖蒲やシャクヤクの類は、大正時代からこの地で品種改良を重ねられてきた伝統あるものだという。

 そのシャクヤクたち、バラ園のすぐ奥にいまを盛りと咲き誇っていた。規模日本一といわれるシャクヤクの園は、170種、2,000株にもおよぶそうだ。花のいのちは短いというが、この1週間前後が見ごろということであった。

 シャクヤクは、チベットから中国東部にかけて自生するボタン科の多年草である。漢字では芍薬と書き、もとは薬用に栽培されていたものだ。それが、あまりにも美しいので観賞用に改良されたのだという。

 この植物園が誇る花は、バラとシャクヤクに代表される。その最も豪華な花たちが咲き競うゴールデンウィーク明けのいまこそ、この植物園のゴールデンシーズンである。思い立ったが吉日というが、この日は偶然にも私のラッキーデーとなった。

 県立のためか、入場料も安くしかも65歳以上の高齢者と高校生以下の子供は無料である。四季折々の花のほか、温室もあって熱帯の植物も十分に楽しめる。
思いつきのおでかけを、ぜひおすすめしたい。
(2007年5月17日)