水温む

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[風を感じ、ときを想う日記](70)2/8
水温む

 土手の斜面では、豆粒のような小さな空色の花が開きはじめた。振り返ると、いま抜けてきた雑木林の隙間から、白や紅色の梅の花が垣間見える。

 自宅から20分あまりの、この引地川の川べりには、もう春が顔をのぞかせはじめている。水の中を覗くと、丸々と肥った真鯉たちが群れてじゃれあっている。小舟ほどの小さな中州では、鴨たちがうららかな陽光を浴びて羽づくろいに余念がない。

 靴を脱ぎ、水の温もりを確かめてみたい衝動に駆られる。しかし、自然が売り物といってもしょせんは都市河川、かつてはダイオキシンの垂れ流しで騒がれた場所でもある。尻込みこそ、最善の行為かもしれない。

 頬を撫でるそよ風も、いっそう軟らかさを増してきた。水遊びは鯉や鴨たちに任せ、ひとり風と戯れてみることにした。

写真は、引地川の一見うまそうな鯉たち・・誰も捕る人はいない。