七五三参り

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[エッセイ 39](既発表 3年前の作品)
七五三参り

 11月になると、街のあちこちで晴れ着姿の子供を見かけるようになる。11月15日は七五三参りの日である。男子は5歳、女子は3歳とさらには7歳になると、その成長を祝って大人っぽい晴れ着に身を包み神社にお参りする。

 わが家系でも2人の孫がそれに該当する。娘の長女が7歳、同じく長男が4歳である。長男のほうは1年早いが、早いのは一向に構わないということなので長女と一緒にお祝いすることにした。

 先週の日曜日、両家のお爺ちゃんお婆ちゃんたち4人も、昼前には川崎のマンションに勢揃いした。近所の中華料理店で8人そろっての昼食をとり、予約してある子供専門の写真館に向かった。大型スーパーの2階にあるその店は、七五三の客でごった返していた。

 順番待ち、お化粧、着替えと続きやっと写真撮影の番になった。さすがに7歳のお姉ちゃんは慣れた手つきでポーズをとっていたが、4歳の弟はなかなか決まらない。そんな調子で、最初は当人1人ずつ、次に姉弟2人揃って、さらに両親を入れて4人で、最後にジジババ4人を加えて八人でパチリとやった。店を出るとき時計を見たら、4時半になろうとしている。なんと、記念写真だけで2時間半を費やしていた。

 前もってお願いしてあったという川崎駅近くの稲毛神社に着いたときには、日もとっぷり暮れて薄暗くなっていた。神社にお参りするのは午前中がいいといわれているが、この日の日柄「友引」はむしろ午後が望ましいとのこと。そんな言い伝えに救われつつ、他の2組の家族と厳かに祝詞を上げていただいた。わが一族の厳粛な行事は、一日がかりでやっとその幕を閉じることができた。

 七五三参りは、起源は平安時代にまでさかのぼるが、現在のような形に整えられたのは江戸時代といわれている。7歳のお祝いは「帯解(おびとき)の儀」といい、女児が対象になっている。5歳のお祝いは「袴着(ちゃこ)の儀」という男児の行事である。袴着の儀は3歳のときも行われていたが、いつのまにかすたれ現在はあまり見かけなくなった。3歳のお祝いは「髪置(かみおき)の儀」といい、女児を対象にしている。

 7歳の女子は着物に祝い帯、男子は羽織に袴、3歳の女児は肩上げをした着物に朱赤のちゃんちゃんこというのが七五三の伝統的な盛装である。なぜか、千歳飴が小道具として年に一度登場する。

 親が、子供の成長を願いそのことを無上の喜びとするのは、遺伝子に刷り込まれた動物の本能である。まして、子供の死亡率の高かった時代には、その意義と重みは現在とは比較にならないほど大きかったはずである。

 少子高齢化の時代、おじいちゃんおばあちゃんが孫を愛でる姿を、平和と繁栄の象徴的な光景として永く後世に伝えていきたい。
(2003年11月23日)