花粉症

[エッセイ 51](既発表 2年前の作品)
花粉症

 この日も、そのゴルフ場には白いマスクをかけた人が数人いた。なにかとても異様な雰囲気を感じさせる。なにもそこまでしてゴルフをやらなくてもと思うが、本人にしてみれば2ヵ月も3ヵ月も休んではいられないということになるのだろう。

 なにしろ私のホームコースは箱根の中腹にあり、まわりはほとんどが杉林である。風の強い日は杉の枝が大きく揺すられ、黄色い粉がいっせいに飛び散る。花粉症の人でなくても尻込みしてしまう光景である。

 子供のころ、花粉症という病気は知らなかった。もちろんそんな言葉もなかった。日本で最初に発見されたのは1961年のこと。この時はブタクサによる花粉症だった。杉による花粉症は、それから2年遅れて1963年に関東地方で発見されている。いまでは全人口の10~15パーセント、1500万人前後の人が患者だというから、国民病になったといっても過言ではあるまい。

 さいわい、私にはその症状は出ていないが、実際にかかった人は本当につらい思いをされているようである。目がかゆくごろごろして涙がとまらない。鼻水やくしゃみは一向に治まる様子がない。イライラが募り集中力は途切れっぱなしになる。このような症状は、杉や桧あるいはブタクサの花粉によって引き起こされる目や鼻のアレルギーと考えられている。

 人間は普通、花粉などの異物が目や鼻に入ってくると、それを簡単に処理できるそうであるが、花粉症になりやすいいわばアレルギー体質の人はそれに過剰に反応してしまうそうである。その過剰反応が花粉症の症状ということになるのであろう。

 対策は、花粉を体に入れないことである。窓を締め切って外出を避ければ申し分ないが、そうもいかないとすればメガネとマスクが効果的である。外から帰ったら、衣服に付着している花粉を室内に持ち込まない注意も必要である。目や鼻の洗浄、喉のうがいも直接予防につながる。

 治療は、やはり早めにお医者さんに行くことである。アレルギーというのは個人差が大きく、その人にあった治療をしない限り、副作用多くして効果少なしということになりかねないからである。お医者さんの説明をよく聞き、納得の上で継続的に治療に取組みたい。一方、長期展望にたった体質改善にもぜひ挑戦してみたいものである。

 花粉症はある年突然発症することが多いといわれている。これは花粉に対する「IgE抗体」という抗体が体の中である一定数以上できたときに、アレルギー反応が始まるためだそうだ。ただし、その一定数がどの程度なのか、個人差も含めてまったくといっていいほど分かっていないようである。

 私も、60数年間IgE抗体をためてきた。60歳以上は発症が少ないといわれてはいるが、できることなら花粉症とのお付き合いは御免こうむりたい。
(2004年3月13日)