十月三日の彼岸花

[風を感じ、ときを想う日記](1283)10/3

十月三日の彼岸花

 

 わが町の駅前の一角で、古くなった商店の解体作業が行われている。この辺りでは最も古くからあった洋品店だ。時代の変遷を実感させられる解体現場である。その敷地の片隅に、赤い花がいまを盛りと咲きほこっている。時期を間違ったのではないかと思わされるほど、ひときわ遅い開花である。いままでの記憶では、10月に入ってあの花を見かけたのは初めてである。

 

 彼岸花は、太古の昔からきちんと季節を感じさせてくれる花である。その名前のとおり、彼岸の間にきまって咲かせる生真面目な花である。もう何十年もその開花を楽しみにしてきているのでその律儀さはよく分かっている。それが、今年に限っては大きくずれ込んでいるようだ。いわば“時期はずれ”の彼岸花である。やはり、今年の夏の長引いた猛暑がそうさせたのだろうか。

 

 季節感を狂わせる花は、最近ではいろいろなところで見かけられるようになった。その代表格は、花が小型のヒマワリである。葉っぱも小さいが、その割に茎は細く枝がたくさん出ている。夏を前に咲き始め、いまもしぶとく咲いている。もう一つ、朝顔のような花である。一日中咲いており花を付ける期間も長い。二つとも名前はわからないが、これらも季節感を狂わしてしまいそうな花である。

 

 新種開発の結果だろうか、あるいは気候変動など環境の変化によるものだろうか。種類が増える一方で、私たちの季節感がそれに対応しきれなくなってきた。