ピアノ教室の発表会

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[エッセイ 164](新作)
ピアノ教室の発表会
 
 県内に住む娘には2人の子供がいる。上がお姉ちゃんで、春休みが明ければ小学校5年生になる。下は男の子で、今度2年生なる。

 1ヵ月近く前、その男の子から電話があった。横浜の「みなとみらいホール」でピアノの発表会があるので、ぜひ見に来てほしいというものであった。発表会にはお姉ちゃんも出るという。弟の方は昨年あたりから習いだしたと聞いていたが、もうそれほどになったのだろうか。
 
 みなとみらいホールに、子供の発表会をやるような小さなホールが併設されているのだろうか。あの子は、そしてお姉ちゃんはどんな曲を弾くのだろうか。プログラムは事前にもらっていたのに、ろくに見もしないでそんなことを考えながら会場に向かった。

 会場は、2,000人あまり収容のコンサートホールそのものであった。客席は1階が半分以上埋まっていた。舞台には12台のエレクトーンと、ドラムなどがすえつけられていた。演奏は、だいたいが10名前後の合奏であった。

 演奏はなかなか迫力があった。低学年は童謡、中間層はポピュラー音楽、そして高学年にもなるとクラシック音楽に挑戦していた。エレクトーンの、それも10名前後の合奏となると、音さえ外さなければ凡人には十分に通用する。15曲、2時間あまりはあっという間に過ぎてしまった。

 それにしてもこの発表会、プログラムを詳細に見てその規模の大きさに驚いた。このみなとみらいホールを5日間借り切って、午前、午後、それに夜の1日3回、延べ15回にわたって催すことになっている。

 演奏曲数は1回平均15曲、延べ195曲が組まれている。参加者は1回平均174名、延べ2,258名に上る。参加者1人に3~4名の父兄が付き添ってくると、この会場には延べ1万人近い人が集うことになる。1,000名収容の1階席が、半分以上埋まっていてもなにも不思議なことではない。

 この発表会は、ある大手楽器メーカー系列の音楽教室が合同で開催したものである。横浜と川崎の22の教室だそうだ。参加料は発表者1人につき1万円だという。それだけで、2千2百万円のお金が集まることになる。

 このような発表会は、おけいこごとにはつきものである。発表会にむけて、おけいこにもだんだん熱が入ってくる。終わってみれば、格段に力がついたことを実感する。みんなで参加することで、自分自身のレベルと課題を知ることもできる。本人はもとより、父兄にとってもよき道しるべとなるはずである。

 事情が許すなら、独奏を間近に見てみたい。できうることなら、自宅に据えられた高価な楽器が、将来にわたって粗大ゴミにならないことを祈りたい。
(2007年3月31日)