ウォーキング

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[エッセイ 104]
ウォーキング

 私の後ろから、猛烈な勢いで追い抜いていった男女の二人連れがいた。声をかけられて振り向くと、近所の知り合いのご夫婦であった。すでに、お二人とも背中は汗でビショ濡れになっていたが、歩速を緩める様子はなかった。

 私の住んでいる住宅地も高齢化がすすみ、陽が落ちて多少涼しくなると、ウォーキングに励む老夫婦に数多く出会う。この日も、さらに二組の知り合いに出会った。この時間、近所の川沿いの道は、ウォーキング中の夫婦と散歩に出てきた犬連れの人達で大いに賑わう。

 一体、いつ頃からウォーキングなどというものが流行るようになったのだろう。万歩計が登場し、一日一万歩が国民の義務のようにさえ思われるようになった。確かに、ウォーキングは歩くことを主体にした健康法である。脂肪が燃える、血行がよくなる、血圧が安定するなど、生命維持のあらゆる循環が促進される。有酸素運動の効能により、心肺機能は高まり、内臓は強化される。脳の強化や精神状態の安定にもつながるという。もちろん、ストレスの解消に大きな効果があることはいうまでもない。そしてなによりも、安直にできてお金がかからないのがうれしい。

 私は、ウォーキングに出かけるとき、必ず運転免許証と小銭を携帯する。考えたくはないが、不測の事態に備えるためである。私は、例の川沿いの道を約30分かけて歩くようにしている。しかし、それはどうやら最低ラインのようである。ウォーキングのペースを、歩幅65センチ、歩行速度10分で800メートルと仮定すると、私の30分は2、4キロ、3,690歩にしかならない。ちなみに、同じ基準で考えると、10,000歩は6、5キロ、81分間歩く計算になる。

 ウォーキングは、長続きさせることを最優先に考えたい。健康のため、老化防止のためなどと考えすぎると、うまくいかなった時の挫折感の方が心配である。気候や体調に合わせて無理をせず、マイペースで楽しむことが大切である。毎回ルートを変えて、新しい発見や出会いに挑戦してみるのも一興である。ただ、場当たり的にすぎてもかえって飽きがくる心配もある。自分なりの適量を見極めて挑戦目標とし、自分に適した歩き方を見つけて実行計画とする。これが、ウォーキング成功の秘訣のようである。結果を見ながらそれらを練り直していけば、さらに納得のいく成果につながるのではなかろうか。

 老化は足からやってくる。足が弱ると体力が急速に衰え、認知症が大急ぎでやってくる。高齢者にとって、歩くことは必要不可欠かつ最適の健康法といっていい。とかく引きこもりがちな人達には、外に出るだけでも気晴らしになるはずである。さあ、胸を張って、大股でさっそうと歩こう。
(2005年9月10日)