[エッセイ 610]
最近、カラフルなリング状のマークをよく見かける。SDGsのマークである。帯状のリングを17に区切り、各ゴールのシンボルカラーで色づけしたものだ。そのSDGsとは、Sustainable Development Goals のことで、日本語では「持続可能な開発目標」という。2015年9月に、193ヵ国のリーダーが出席して開かれた国連のサミットで、全会一致で採択された国際社会共通の目標である。17のゴールと169のターゲットからなっている。いわば、人類が直面する重要な課題とその具体的な解決策である。対象期間は2016~2030の15ヵ年である。
17のゴールとは次の通りである。①貧困をなくそう、②飢餓をゼロに、③すべての人に健康と福祉を、④質の高い教育をみんなに、⑤ジェンダー平等を実現しよう、⑥安全な水とトイレを世界中に、⑦エネルギーをみんなにそしてクリーンに、⑧働きがいも経済成長も、⑨産業と技術革新の基盤をつくろう、⑩人や国の不平等をなくそう、⑪住み続けられるまちづくり、⑫つくる責任、つかう責任、⑬気候変動に具体的な対策を、⑭海の豊かさを守ろう、⑮陸の豊かさを守ろう、⑯平和と公正をすべての人に、⑰パートナーシップで目標を達成しよう。
これら17項目の「ゴール」は、いま地球上で問題となっており、みんなで力を合わせて解決しなければならない人類共通の差し迫った課題である。そして、それを実現するための「ターゲット」は、169項目にもわたって具体的に列挙されている。これらの整理作業には、莫大な労力が費やされたはずである。地域毎、国毎の利害調整は、さらに困難を極めたものと推測される。
しかし、これだけたくさんの項目が列挙されれば、総花的すぎてよく分からないというのが正直な感想である。もともと、これらの問題点やその影響度は、国や地域によって、さらには人によってことごとく違うはずである。ついては、対象ゴールをどこまで絞り込んでいけるか、取り組むターゲットをどこまで具体化できるかが問われることになる。そして、相互の分担と連携が重要な鍵となる。
ついては、こんな風に取り組んでみてはどうだろう。まずは、取り組むべきゴールとターゲットを、国ごと、市町村ごとにそれぞれ数件ずつに絞り込む。次に、テーマ毎の現況と最終改善目標を区域単位にデータで公表する。つづいて、改善の具体策を区域毎に策定し公約として発表する。これらの成果や進捗状況は、区域毎、年度毎にデータで発表する。成功した事例は、そのノウハウを他の国や市町村に無償で提供する。法制化すべきものは、ためらわずそれに取り組む。
人は、身近な具体的な問題ほど真剣に取り組むものである。SDGsの成功は、課題をいかに身近な問題として捉えることができるかにかかっている。そして、小さな成功の積み重ねこそが、ゴール到達への早道である。
(2021年11月9日 藤原吉弘)
(参考)[ゴールの英語表記と(シンボルカラー)]
①NO POVERTY(赤)
②ZER HUNGER(マスタード)
③GOOD HEALTH AND WELL-BEING(ケリーグリーン)
④QUALITY EDVCATION(暗赤色)
⑤GENDER EQUALITY(赤いオレンジ)
⑥CLEAN WATER SANITATION(瑠璃色)
⑦AFFORDABLE AND CLEAN ENERGY(黄色)
⑧DECENT WORK AND ECONOMIC GROWTH(ワインレッド)
⑨INDUSTRY,INNOVATION AND INFRASTRUCTURS(オレンジ色)
⑩REDUCED INEQUALITIES(赤紫色)
⑪SUSTAIMABLE CITIS AND COMMUNITIES(黄金色の黄色)
⑫RESPONSIBLE CONSUMTION AND PRODUCTION(ダークマスタード)
⑬CRIMATE ACTION(ダークグリーン)
⑭LIFE BELOW WATER(青)
⑮LIFE ON LAND(ライムグリーン)
⑯PEACE, JUSTICE AND STRONG INSTITUTION(ロイヤルブルー)
⑰PARTNERSHIP FOR THE GOAL(紺)