Pen-Tax

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[エッセイ 365]
Pen-Tax

 今年も所得税の確定申告の季節がやってきた。税務署の窓口での受付けは2月18日からだが、e-Taxと呼ばれるインターネットによる申告の受付けはすでに1月15日から始まっている。

 先週、そのe-Taxによる申告作業に取り組んだ。もう4年目になるので、手なれたものになるはずだった。ところが、今回もやっぱり途中でつまずいてしまった。最終段階になって、完成した申告書を保存しようとしたが、保存はもちろんプリントさえできなかった。保存できなくても、税務署あてに送信できればそれでかまわないと思ってやってみたがそれもだめだった。

 結局、“e-Tax・作成コーナーヘルプデスク”に電話で助けを求めた。ああでもないこうでもないというやり取りを重ねた結果、Adobe Readerというソフトの能力不足ではないかということに落ち着いた。国税局の求めているグレードは“9”以上だが、私のパソコンには“8”しか組み込まれていなかった。

 ネットによるソフトの入れ替えは、申告作業の途中でもできるという。しかし、指示された操作ではうまくいかない。そこで、次善の策として示されたやり方を試したところ、データの保存と税務署への送信にはなんとか成功した。ただ、保存したデータは開くことができず、プリントもできないままである。

 この間、電話でのやりとりには1時間近くを要した。救助を求めた先の電話番号は、“0570”なので、付帯費用も相当な額に上ったはずだ。しかし、とにもかくにも一件落着したし、保存したデータもそのうち開く方法が見つかるかもしれない。それで納得したことにするよう自分自身に言い聞かせた。

 ところがその翌日、家内から「こんなものが残っていた」と“公的年金源泉徴収票”を手渡された。見ると、別の企業年金基金から送られてきたものだった。今回に限りそれが2枚あった。実は、現役時代勤めていた会社が数年前に企業統合され、企業年金基金も昨年末に統合された。昨年支給された年金のうち、最後の1ヶ月分はその新しい方からのものだった。

 もう一度確定申告をやり直す必要がある。しかし、保存したデータは開くことができない。それより、またあの気難しいe-Taxとは、しばらくお付き合いしたくない。そこで思い付いたのが以前やっていたペンによる手書きの申告書作成である。いわば、Pen-Taxである。もちろんカメラのブランドではない。

 手作業は簡単で、2時間余りで終わった。還付金もやり直す前より1万円近く多くなっていた。そして、なによりよかったのは、すっかり忘れていた所得税の仕組みをあらためて勉強しなおすことができたことだ。この数年の間に、火災保険の控除が無くなるなど税制もかなり変っていた。

 e-Taxはもちろん便利だが、Pen-Taxにもそれなりの効用があるようだ。
(2013年2月18日)