分電盤 二題


[エッセイ 720]

分電盤 二題

 

 家内が、昼食に炒め物を作ろうと準備をしているときだった。ガスコンロに火を付け、次にレンジフードを起動させようとするが全くスイッチが入らないという。そこに内蔵されている照明も点灯しないらしい。「エーッ、とうとう壊れてしまったか」。考えてみればもう40年以上も使っている。当然といってしまえばそれまでだが、とうとう寿命が尽きてしまったのかもしれない。

 

 私は、昼食の支度が整うまでの間、隣の部屋でネットによるレンジフードの品選びを始めた。商品だけで10万円近くするようだ。当然、施工も伴うのでその予算も考えなければならない。それもそうだが、どうやって施工業者を選ぶかも重要だ。このご時世、うっかりすればとんでもない料金を請求されかねない。

 

 そのときだった、今度は電子レンジのスイッチが入らないという声が聞こえてきた。レンジフードの近くにあるコンセントから引いている機器だ。すぐ飛んでいってチェックしてみたが何の応答もない。このように、2カ所同時に問題がおきたとすれば、機器そのものではなくその近くの電源に問題があるのかもしれない。一方、台所の照明や冷蔵庫などほかの部分は正常に機能していた。

 

 まずは大元からと考え、別の部屋に設置されている分電盤を覗いてみた。9つある黒いスイッチのうち、一つだけ下を向いていた。とりあえず、それをONにセットしなおし、台所にもどってレンジフードのスイッチを押してみた。正常に動いた。電子レンジも普段どおり作動した。家内の話によると、1時間ほど前に、室内の掃除であのあたりにハタキを掛けたということだった。

 

 ところで、この分電盤については、つい最近もう一つ危うい話を経験したばかりである。ある朝、○△電気工事会社と名乗る業者から電話があった。それを受けた家内は、○曜日の午後△時ごろ、分電盤の取り替え工事に来るといっているよ、といって受話器を私に回した。私はとっさに、“事前の書類での案内もなく、電話だけのお申し越しは受け付けません”といって断った。

 

 そういえば、あのときの結末は極めて良心的だった。あのときとは、7年前の大晦日の深夜に発生した、ブレーカーのトラブルとその処理である。分電盤脇のブレーカーが壊れ、2020年の大晦日から翌元旦にかけて電力会社によって無料で修理してもらったことだ。(エッセー579「暗闇の大晦日」2021,1,1付)

 

 ブレーカーも分電盤も、いずれもわが家の屋内にあり、ボード上に並べて設置されている。距離にして3センチ、電気コードの長さにして10センチしか離れていない。それらの所有権と管理責任は電力会社とわが家でどう区別されているのだろう。あの、あたかも電力会社の代理のような言い回しで電話してきた○△電気工事会社と名乗る業者の下心も含めて、改めて考えてみたい。

(2026年9月23日 藤原吉弘)