神無月

[エッセイ 641]

神無月

 

 今日、10月2日には、町内の神社で祭礼が行われていた。買い物で、偶然その前を通りかかったので、そのまま立ち寄ってお参りしてきた。それで思い出したが、ふるさとの各部落にお祀りされている神社のお祭りも、たいていこの時期に行われている。「秋祭り」という言葉があるくらいだから、神社のお祭りといえば米の収穫が終わるこのころに集中しているのではなかろうか。

 

 それにしても不思議な話ではある。10月といえばその異名は神無月、神さまのいない月ということである。なんでも、全国の神さまたちが、会議のために出雲大社に集まるのだそうだ。そんな神さまのご不在のときにお祭りをするとは、まったく納得のいかない話である。そのときに繰り出すお神輿は、神さまに乗っていただき庶民の暮らしぶりを見ていただくためのものだが、無神のお神輿などただの飾り物でしかないことになる。

 

 そこで、神無月についてもう少し掘り下げて調べてみることにした。神無月(かんなづき、かみなづき)とは、“神の月”というのが本来の意味だそうだ。神無月の“無”は、“無し”ということではなく連体助詞の“の”というのが本来の意味だそうだ。6月の水無月が“水の月”、言い換えれば水の有る月という意味であるように、神無月も“神さまを祭る月”と解釈するのが妥当なようだ。

 

 それでは、前記の“神さまがいない月”という解釈はどこからきたのだろ。この説は平安時代になってからの後付けで、以下のような解説も見受けられる。出雲大社の神は大国主命で、彼には沢山の子供がいた。成長した子供たちは、全国の各神社を任されるようになった。大国主命は、地方の神社で神を努める子供たちを集めて、年一回の会議を開くようになった。やがて、伊勢神宮天照大神のほかは、ほとんどの神々がその会議に参加するようになった。

 

 ついでだから、10月を意味する英語のオクトーバー(October)とタコのことを指すオクトパス(Octopus)にまつわる疑問も解明してみることにした。Octoとは“8”という意味であることから、オクトーバーは“8番目の月”、オクトパスは“8本の足”という意味になる。8本の足はすぐにピンとくるが、8番目の月は理解に苦しむ。実は、元になっている暦は古代ローマのもので、3月がスタートになることから10月は8番目の月となるのだそうだ。

 

 かくして、ここでは神さまのことについて考えてきたが、多神教の日本にはどのような神さまがどれだけおられるのだろう。あまりにも多いので人気ベスト10を上位からあげてみた。天照大神日本武尊、伊邪那伎、伊邪那美須佐之男命、大国主命、天宇受売、木花咲耶姫瓊瓊杵尊そして猿田彦命である。日本におられるこれらの神々様には、これからもみんなの安寧をお祈りしたい。

                      (2022年10月2日 藤原吉弘)