琵琶湖

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[エッセイ 574]

琵琶湖

 

 琵琶湖をグルッと一回りしてみて、この日本最大の湖が大変興味深いところであることにあらためて気がついた。この湖は、どこで、いつごろ生まれたのだろう?「生き物ではあるまいし、今の場所に昔からあったということにきまっているではないか」といわれそうだ。しかし、それでは答えにならないのだ。

 

 琵琶湖は、100万年くらい前、いまの三重県伊賀市あたりで生まれた。それが、地殻変動によって少しずつ移動を続け、60万年くらいかけて50キロあまり北の今の位置までたどり着いた。そこで、腰を落ち着けたのがおよそ43万年前と推測されている。生まれた年代でみると、世界で13番目に古い湖だそうだ。

 

 琵琶湖は、世界でもずば抜けて古く、面積は日本で最大の670㎢もある。しかし、大きさを世界ランクで見ると188番目でしかない。たしかに、地球上には大きな湖はいくらでもある。世界最大のカスピ海は371,000㎢あり、琵琶湖の554倍にもなる。ちなみに、広さ23,203㎢の瀬戸内海は琵琶湖の35倍に相当するが、その瀬戸内海ですらカスピ海と比べれば16分の1でしかない。

 

 その琵琶湖を囲む滋賀県の面積は4,017㎢あり、県別のランクでは38番目である。ただし、その6分の1は湖水なので、仮にこの琵琶湖の面積を差し引くと3,347㎢となり、41位である鳥取県の3,507㎢の次ということになる。琵琶湖の周囲は241㎞、水面の標高は84.4m、最水深は104.1mである。湖に流入する河川は全部で117本あるが、流れ出るのは淀川へと繋がる瀬田川の1本だけ、人工的に作られた琵琶湖疎水を加えても僅か2本だけということになる。

 

 地図を眺めていると、すぐ近くの淡路島が琵琶湖によく似ていることに気がつく。滋賀県の中心部を南側から巨大なシャベルですくい上げ、頭越しに後方に投げたようなものだ。すくい上げられた土塊は、裏返しのまま瀬戸内海に落下した。海にできた島は593㎢と、掘られた穴の琵琶湖より一回り小さくなった。海に落ちた際、周りが海水に流されたと考えればつじつまが合いそうだ。

 

 琵琶湖にまつわる諺を一つ取り上げてみよう。「急がば回れ」である。昔、草津と大津の間には「矢橋の渡し」という渡し船が運航されていた。しかし、ちょっと荒れるとすぐ運休になってしまう。急いでいるので近道の渡し船を当てにしていたのに、結果的には陸地を廻った方が早かったということである。

 

 ところで、この辺りはかつて近江国と呼ばれていたが、この“江”とは琵琶湖のことを指しており、湖が首都・京都のすぐ近くにあることを表わしている。そして、遠い湖とは浜名湖のことで、遠江国として静岡県西部を指している。琵琶湖は、長い間首都・京都のすぐ側にあって、日本の歴史形成に大きく関わってきた。知れば知るほど、さらに興味が湧いてくるのも当然のところである。

                      (2020年12月5日 藤原吉弘)

写真(上):比叡山からの琵琶湖南部の眺め・・左端の橋は琵琶湖大橋

写真(中):湖上に立つ白鬚神社の大鳥居

写真(下):湖岸の紅葉