重陽の十日夜

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[風を感じ、ときを想う日記](996)10/26

重陽の十日夜(ちょうようのとうかんや)

 

 昨日は、朝からきれいに晴れ上がり、ぽかぽか陽気の一日となった。透き通った空には、日が沈むころになっても雲ひとつ現われてこなかった。その抜けるような明るい空の色が、少しずつ濃さを増し、深みのある闇へと変っていった。

 

 その暗くなりはじめた南東の空に、上弦からさらに一回り成長した明るい月が浮かび上がってきた。新月から数えて9日目、「十日夜(とおかんや)」と、親しみを込めて呼ばれる若月である。年の頃なら十代半ば、未熟でありながらその先に大きな期待を抱かせる若々しい姿である。

 

 9日目という月齢を考えていて、はっと思いあたるものがあった。そういえば、この日は旧暦の9月9日ではないか。以前なら、一年で一番おめでたい重陽節句である。急いで暦を調べてみた。やはり間違いはなかった。おまけに日柄は大安だった。秋晴れの素晴らしい好天は、決して偶然ではなかったようだ。

 

 そうか、この25日という日は給料日だったなあ。若いころは、現金の入った給料袋を直接手渡された。銀行振り込みと違って、働いたという実感が直に手に伝わってきた。自宅に帰っても、いっときは大きい顔ができたものだ。

 

 そういえば、先日、エッセーで木枯らしのことを書いたが、その木枯らし1号が近畿地方で昨日実際に吹いたという。関東地方があんなうららかな一日だったというのに、狭いようでもやっぱり日本もそれなりの広さがあるようだ。