メジロの抱卵

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[エッセイ 561]
メジロの抱卵

 今日は朝方から大雨になった。昨日、熊本県球磨川を大暴れさせたあの線状降水帯がこちらに向かってきているところかもしれない。われわれ自身これから十分気をつけなければならないのは当然だが、その一方、わが家の庭のハナミズキで抱卵しているメジロのことも心配である。


 あれは6月末ごろのことだった。ハナミズキのてっぺんに近いところ、葉っぱの茂ったあたりに緑色の小鳥がさかんに出入りしていた。メジロのような気もするが、高速で飛ぶので確認するいとまもない。この時期、こんなかたちでメジロが姿を現わすのは珍しい。ひょっとすると、営巣しているのかもしれない。


 しかし、あそこは、かつてヒヨドリが抱卵したことのある場所である。そのときは、雛の巣立ち直前にヘビにやられた。緑色の50センチくらいの見慣れない小型のものだった。わが家では、梅の木に山鳩が営巣したこともある。その木の幹は斜めになっていたので、こちらはネコが登って巣を荒らしてしまった。


 あれから一週間近くが経つ。しかし、ここ数日、緑色の小鳥の出入りがみられなくなった。野球ボールくらいの巣らしきものが葉っぱの陰から見え隠れするが、小鳥の出入りはまったく見られなくなった。ひょっとして、営巣を放棄してしまったのだろうか。ここ数日雨風が強く、そのあたりも大荒れに荒れていた。営巣にはとても適していないと判断されてしまったのかもしれない。


 もし、放棄してしまったのなら、せめて巣の写真だけでも撮っておきたい。その前に、まだ見たことがないという家内にも見せておきたい。ちょうど雨が上がった昨日午後、家内を呼び寄せ竹竿で巣のあたりを指し示した。その瞬間、小鳥が飛び出してきた。「ごめん!巣に座っていたのだね」。


 1時間後、そのあたりをそっと覗いてみた。小鳥がその巣に座っていた。目の周りに白い輪っかのあるあのメジロに間違いなかった。メジロはちゃんと抱卵しているようだ。いま座っているのはメスだろうか。いずれにしても抱卵を続けていることが嬉しかった。もうこれ以上、巣に近づかないようにしよう。


 メジロの抱卵期間は11日間と聞いている。このペースでいくと、あと数日間で雛が孵るはずだ。そして、雛が育って巣立ちするまでにはさらに十数日かかるという。あと2週間あまり、とにかくそっとしておき、抱卵と子育ての様子をじっくりと観察させてもらうことにした。


 これから、梅雨末期に向かい、降雨はいっそう激しくなることが心配される。しかし、メジロの抱卵場所は、ハナミズキの大きな葉っぱに何重にも覆い隠されている。雨よけ効果は抜群であり、天敵のカラスやヘビにも見つかりにくい場所である。まずは、可愛い雛が無事誕生することを祈りたい。
                       (2020年7月6日 藤原吉弘)

写真ー上

 抱卵している場所・・メジロの顔が写っているはずだがよく分からない。